上から目線の転換では何も進まない

泉 突破口を開く役割としては、みんなのできないという思い込みを、そんなことない、こうすればできましたよとモデルを見せていく。それをやるにあたっては、別に私みたいな濃いキャラである必要はない。参考になればいいし、エリアが違う以上、その地域の特性に合わせてやればいいし、いろんなスピード感があっていいと思う。それを今やっている最中で、この本もそこに位置づくわけです。今後続々と全国各地で新しい動きが始まってくれれば、いずれ、国のほうにも積み上がっていく時期が来るだろうと私は信じているんです。

藻谷 それを上からやっちゃうと、同じ構造の繰り返しになりますからね。

 そうなんです、おっしゃったとおり。さすがです。上から目線を上からやったら一緒です。ポイントは目線の転換なんですよ。明治維新以降の国家が近代化するに際して、上の言うことを聞け、全国同じことをやれという時代はありました。それは一定程度合理性はありましたが、今は時代転換の状況だから、地域ごとの特性を生かしたほうがより合理的なんですよ。とろい、スピード感のない状況で、全国一律で遅く言うてくるコロナの時と同じですよ。コロナなんて感染領域も違うし、医療体制も違うんだから、地域に合わせた医療体制をつくり、経済政策をとっていたほうが合理的なのに、国は許さない。

「明石モデル」で子育て世代と高齢者層から圧倒的な支持を受ける泉房穂氏が唯一、氷河期世代から不人気な理由_5

藻谷 江戸時代にも、せっかく蔵にお救い米がありながら、飢饉のときに放出しない謎の藩みたいなのが結構ありました。今の地方都市でも、温度差はとても大きいですね。大企業だってそうです。何のために内部留保をため込んでるのか分からない。やらなきゃいけないときに払う気がない。

 基金なんて災害とか、もしものときのお金でしょう。今使わなかったらいつ使うねんと。コロナでは意外と全国の自治体、ほとんど手をつけなかったです。でもね、これからは変わらざるを得ないと思います。明石がちゃんと成功モデルをつくりましたから。