『VIVANT』でもまだ謎の多い“別班”はなぜ非公然組織になったのか。元所属者による暴露本の衝撃的内容…しかし「過去も現在も存在しない」と防衛省(防衛庁)は主張
身分を偽装した自衛官が国内外でスパイ活動を行う“別班”。彼らが秘密情報部隊として扱われたのはなぜか。“別班”に実際に所属していた関係者が出版した情報資料をもとに、その正体に迫る。『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』 (講談社現代新書) より、一部抜粋・再構成してお届けする。
『秘密情報部隊「別班」の正体』#2
元別班長でしか知り得ない、もうひとつの新事実
平城はこの改称について、〈日米秘密情報機関に対して、「ムサシ機関」という名称がいまだに使われているということは、「小金井機関」がいかにその秘密を厳守し続けてきたかということの証明である〉と胸を張っている。
改称の事実以上に驚かされたのは、1980年に発覚したスパイ事件(宮永事件)で別班関係の「極秘」文書が漏洩していたことだ。
当時、元陸将補・宮永幸久らが在日ソ連大使館駐在武官に防衛庁の秘密情報を流していたことが発覚し、大問題になった。
裁判では、程度の低い秘密情報しか漏洩されなかったとしていたが、平城はこの中に、別班が関係する日米情報連絡会議(JA会議)で出された中国関係の「極秘」資料が含まれていた疑いが強いことを明らかにした。これこそが、元別班長でしか知り得ない、もうひとつの新事実である。
平城は次のように述べている。
〈私が陸幕二部別班長、すなわちムサシ機関長時代、日米共同情報機関の秘密保全にどれだけ苦労したことか。いままでその事実は誰にも話していなかった。また、秘密情報に従事した部下の自衛官たちも、退職しても死ぬまで口を開かないと、決然たる態度を示している。にもかかわらず、陸幕二部情報収集一班長を経験し、日米秘密情報機関という合同情報機関を指導する立場にあった宮永氏の行為は、絶対に許すことはできない〉
こうした関係者による出版が相次いでも、未だに防衛省(防衛庁)は一貫して別班について「過去も現在も、存在しない」と言い張っているのは、なぜだろうか。
文/石井暁 写真/shutterstock
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『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』 (講談社現代新書)
石井 暁
2018/10/17
¥880
200ページ
ISBN:978-4065135884
TBS系日曜劇場VIVANTで話題沸騰!
帝国陸軍から自衛隊に引き継がれた“負の遺伝子”とは? 日本が保持する「戦力」の最大タブーとは?――身分を偽装した自衛官が国内外でスパイ活動を行う、陸上自衛隊の非公然秘密情報部隊「別班」に迫った日本で唯一の書! 別班と三島由紀夫の接点、別班と米軍の関係、海外の展開先、偽装工作の手法、別班員になるための試験問題……災害派遣に象徴される自衛隊の“陽”とは正反対の“陰”の実体!
■帝国陸軍から自衛隊に引き継がれた、“負の遺伝子”とは?
■日本が保持する「戦力」の最大タブーとは?
■災害派遣に象徴される自衛隊の“陰”とは?
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本書は、身分を偽装した自衛官に海外でスパイ活動をさせている、
陸上自衛隊の非公然秘密情報部隊「別班」の実体に迫ったものである。
「別班」は、ロシア、中国、韓国、東欧などにダミーの民間会社をつくり、
民間人として送り込んだ「別班員」に、ヒューミントを展開させている。
日本国内でも、在日朝鮮人を抱き込み、北朝鮮に入国させて
情報を送らせる一方、在日本朝鮮人総聯合会にも協力者をつくり、
内部で工作活動をさせている。
たしかに、アメリカのDIA(国防情報局)のように、海外にも
ヒューミントを行う軍事組織は存在する。
しかし、いずれも文民統制(シビリアンコントロール)、あるいは政治の
コントロールが効いており、首相や防衛相がその存在さえ
知らされていない「別班」とは明確に異なる。
張作霖爆殺事件や柳条湖事件を独断で実行した旧関東軍の謀略を
持ち出すまでもなく、政治のコントロールを受けずに、
組織の指揮命令系統から外れた「別班」のような部隊の独走は、
国家の外交や安全保障を損なう恐れがあり、極めて危ういといえるのだ。
「別班」はいわば帝国陸軍の“負の遺伝子”を受け継いだ“現代の特務機関”であり、
災害派遣に象徴される自衛隊の“陽”の部分とは正反対の“陰”の部分といえる。
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〈本書のおもな内容〉
第1章 別班の輪郭
中野学校の亡霊/別班と三島由紀夫の接点/別班と米軍の関係 ほか
第2章 別班の掟
海外の展開先/偽装工作の手法/別班員になるための試験問題 ほか
第3章 最高幹部経験者の告白
別班を指揮する正体/元韓国駐在武官の証言 ほか
第4章 自衛隊制服組の独走
事務次官と陸上幕僚長の反応/防衛大臣の対応/別班OBたちの言葉 ほか