映画業界はゴマスリ or DEAD!
――そういう業界で生き残っていくには、何が大事なんですか?
奥田 ゴマスリじゃないですかね。私はもう虫の息なんで(笑)。
呂布 バランス難しいですよね、王様みたいになっちゃって勘違いしてもアウトだし。
奥田 もし私が大衆の注目を引ける部分があるとしたら、自分ほど邦画の闇を通ってきた男はいないってことじゃないですかね。暴力に、横領に、詐欺に、裏切り…ひととおり経験してきました。書けないでしょうけど。
呂布 映画にしたら書けそうですね。
奥田 殺されちゃいますよ。「これ俺のことか?」みたいな(笑)。でも、今は自分のスタイルがしっかりあって、それをなんでもかんでもポリコレ【3】に合わせてやれとか言われて撮るくらいだったら、もう撮らないでバイトした方が100倍マシです。
【3】「特定のグループに対して差別的な意味や誤解を含まぬよう、政治的・社会的に公正で中立的な表現をする「ポリティカル・コレクトネス(Political Correctness)」の略称
――やっぱり奥田監督に映画を撮ってほしいなと思っていますよ。
奥田 私は自分の運命に憤ってるわけですよ。なんでこんな人生なんだっていう。つまずいてつまずいて、何も成功を遂げてこなかったことを思ったときに、やっぱり運命って実態がないから苦しくて……。
自分の体を傷つけてみたり、そこら辺のヤツと喧嘩してみたり、睡眠薬にどっぷり浸かってみたり、そういうことで何か自分の運命に盾突いているつもりだったのかなとか思うときもあります。
呂布 睡眠薬に限らず、破滅型っていうか……何とでもなれっていう時期はもう抜けた感覚ですか?
奥田 全然抜けてないですよ。今はもう睡眠薬も飲んでなくて、以前ほどの破滅型ではないです。でも、あのときから救われたかっていうと、全然救われてない。やっぱり次、もし次に映画が撮れるんだったら、その映画で死んでもいいやぐらいの気持ちはあります。
《前編》はこちらから
#1 「こんなんで女優を脱がせんじゃねぇぞ」。日本映画は政治かクリエイティブか…世界観を堅持してツッパってその結果、失ったものとは…。《ラッパー・呂布カルマ×映画監督・奥田庸介 前編》
取材・文/荒川イギータ 撮影/高木陽春
映画「青春墓場」絶賛公開中
2023年9月1日から東京・下北沢シモキタ-エキマエ-シネマ「K2」で東京再上映