第5位:『スプリー』(2020年)
まずは『スプリー』(2020年)という、ある〝バズり〟に囚われた殺人鬼のスリラー映画から紹介しよう。
主人公は一見どこにでもいるような、ごくごく普通の冴えない若者。2009年に動画配信チャンネルを開設した彼は、商品レビューや音楽制作に没頭。最初こそ単なる趣味として、楽しく配信を続けていた様子だったが、次第に焦りが見え隠れするように。
そしてチャンネル開設から10年後、家族や人生だけでなく、未だ二桁に達するかどうかという視聴者数に心を折られた彼は、「過激なことをしてでも注目を集めたい」という欲求に駆られることとなる。殺人配信だ。
〝ライドシェア〟のドライバーとして車を走らせ、拾った客を車内で殺害。それを嬉々として配信しては、コメントの反応や視聴者数に一喜一憂する主人公の姿は、もはやSNS社会の負の極致。完全に病んでしまっている上、ここまでしてなお彼はなかなかバズらず、同業者から致命的なセンスの悪さを指摘されているところがいたたまれない。やっとバズったと思ったら、不謹慎な茶化しコメントや下ネタで配信が荒れ模様なのにも嫌なリアルさがある。
〝バズり〟にこだわるSNSおよび配信業全般に対し、ドストレートに苦言を呈するその内容は思わず見入ってしまうもので、特にオチの〝匿名ネットらしさ〟が超秀逸。一方で作品としてのややテンポはやや緩慢なため、バタバタ人が死ぬスプラッター映画のような内容を期待すると、肩透かしをくらうだろう。