サドでマゾな奥田監督の撮影
――それは絶対に書きますけど、一旦話をもどします。いろんな大変な目に遭っても奥田監督が映画を撮り続けるのはどうしてですか?
奥田 普通に生きてても、なんかつまんないんですよ。普通の人は平穏な日常も楽しめるけど、やっぱり私は人生何かに懸ける瞬間みたいな、スリルを欲してるんですよね。
呂布 今回、奥田監督の撮影に参加させてもらって、映画ってすごくたくさんの人が関わってるんですよね。監督が全員を使って指示を出して作るっていう、あの感覚ってなかなかないと思います。
自分が形にしたいものを、ある意味全員に押し付けるっていう。あそこまでエゴイスティックな行為って他にちょっと思いつかない。それを経験しちゃうと、いろんなことがくだらなく感じてしまうでしょうね。
奥田 映画を作ってハマった人は、やっぱりまた映画をやりたがるんですよね。戦場に行って、家族の元にもどっても、やっぱりまた戦場に行っちゃう映画『ハート・ロッカー』みたいな。
呂布 奥田監督の現場は特にそうだと思うんですけど、あまりに監督次第な部分がありすぎて。めっちゃ大変だし、僕は絶対ムリだって思いました。
奥田 逆にラッパーは1人でやるということの苦労はありますよね。
呂布 人を巻き込まないので、何とでもなるというか。映画は強い責任感や覚悟がないとできないと思います。それはやっぱり誰にでもできることじゃないし、それをやりたいと思うことさえ、なかなかないですよね。すごくサディスティックな部分とマゾヒスティックな部分の両方がないと厳しいですね。
奥田 変態なんですよ。
呂布 特に監督の作り方は変態だと思います。
奥田 映画監督って立場的にみんなが言うことを聞いてくれるじゃないすか。で、どこかでタガが外れて勘違いして、欲望のままに突き進んじゃう弱い人もたくさんいます。でも、そこをちゃんと自制していないと、おかしくなっちゃう。監督業ってどっかでぶっ壊れてくるんだと思います。今回の映画『青春墓場』もほぼ自主。私の借金ですから
――借金額は?
奥田 585万円。実際、借金になって自分に降りかかると、かなり喰らいます。
呂布 出資してくれるはずだった方が途中で抜けちゃったんですよね?
奥田 そうです。オレが生意気だって、もう飛ばしようがない(製作中止しようがない)状態に来てるのに飛んじゃって。BreakingDownみたいに男の子同士がバチバチ喧嘩するっていう素直な揉めごとではないんですよね。もっと大人がずる賢いことを考えて、騙したり、騙されたり。全然、邦画界はクリーンじゃないですよ。