「すぐに自分の総裁選出馬を模索」で安倍氏を激怒させた下村氏

こうして「会長として衆目一致する人物がいない」(安倍派の衆院議員)状況の中、5人衆が出した結論は「5人衆による集団指導体制」。だが、その案に反発しているのが、塩谷立・下村博文の両会長代理だ。

「塩谷・下村両氏は、5人衆よりベテラン。5人衆が派閥のとりまとめ役となることで、世代交代が進むのが嫌なのです」(全国紙政治部記者)

とはいえ、5人衆も塩谷・下村両氏に簡単に従うつもりはない。
とくに「塩谷さんのことは兄貴分だと思っているけど、下村さんのことは兄貴分とは思えない」(5人衆の1人)と、下村氏への反発は強い。

五人衆と反発しあっている下村氏(本人Facebookより)
五人衆と反発しあっている下村氏(本人Facebookより)

下村氏は、人望に欠けるにもかかわらず、自分ばかり前に出ようとする動きが目立ち、安倍派の現役議員だけでなく、森氏からも信頼を得ているとは言い難い。

「安倍氏の死去後、安倍派幹部が後継の体制をどうするか話し合っていたとき、真っ先に『下村さんだけは排除しよう』となったことを森氏が雑誌で暴露していました」(全国紙政治部記者)

「下村氏は、安倍首相が辞任を表明したときに慰労の言葉もなく、すぐ自分の総裁選出馬を模索し始めて、『まずは、お疲れ様でしたと言ってくるのが先だろう』と安倍氏の怒りを買っていました」(自民党議員)

膠着状態が続くなか、5人衆の一人は「下村さんがどうしても5人衆を認めないというなら、5人衆で派閥から出ていこうか! そうしたら安倍派のほとんどが5人衆についてくるでしょ!」と鼻息が荒い。

全国紙政治部記者は安倍派の今後をこう見立てる。

「まずは、9月中旬にもあるとみられる内閣改造・党役員人事でポストを獲得するためにも、新体制を確定させたいところです。安倍氏が亡くなった直後の内閣改造・党役員人事では首相は安倍派に配慮し、松野氏を官房長官、西村氏を経済産業相、萩生田氏を政調会長、高木氏を国対委員長に就けるなど、安倍派を重用しました。しかし今回、安倍派は強力なリーダーシップをもつ人がいないと足元を見られ、重要ポストの割り当てが減るかもしれません」

故・安倍晋三氏(安倍氏Facebookより)
故・安倍晋三氏(安倍氏Facebookより)
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自民党関係者からは「歴史的に何度も分裂を繰り返してきたのが、今の安倍派です。8月20日の派閥の研修会までに決まればいいですが、会長選びで迷走し、このまま分裂してしまうのでは」との不安の声も出ている。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班