「漫画家をやってきてよかったです、本当に!」

——先生の中で、ファンの方は今どういう存在ですか?

本当によく付き合ってくださって…ありがたいです。ここ、2〜3年でSNSをやり始めたんですが、メッセージもいただいて。時々、私が気づかないような見方を書いてくださって、「あ、なるほどそういう見方もあるな」と思ったりしますね。もちろん今までいただいたお手紙でも、それは感じていたんですが。

——やはり読者の方からのお手紙やメッセージは大切なものなのですね。

はい。漫画家は、孤独なんですよ。読者さんと直接触れ合うことがないので、「もしかしたら、本当は読者さんなんていないのかもしれない!」と思ったりする(笑)。「私は何のために漫画を描いているんだろう」と思うこともあります。

そういう状況に陥ったときに、読者さんからお手紙やメッセージをいただくと、「ああ、よかった……ちゃんと見てくれている人がいる」と思えるんです。

——『メイちゃんの執事』完結後のご予定はもう立っていますか?

【漫画あり】「漫画家は孤独。何のために描いているんだろうと思うこともある」–––「メイちゃんの執事」シリーズ・宮城理子が32年間漫画を描き続けられた理由_3
取材後に掲載された、17年の連載の最後を飾る「マーガレット」のカラー扉

うっすら立ててはいるんですが、それにはあまり囚われないようにしようかなと。とりあえず最後まで描き切って、そのあとにどんな“残りカス”があるかは私にもわからないです(笑)。

あ、そうだ、少し人間らしい生活をしようとは思っています。大学4年から漫画を描いてきて、ありがたいことに連載をずっといただいてきたので、人間らしい生活をしてこなかったんですよ。

——「人間らしい生活」とはどういうものでしょう。

土日は友だちと会って食事をするとか、ゴールデンウィークは旅行に行くとか、そういうごく普通のことをしたいです。親も結構高齢なので、悔いがないように一緒に過ごしたいとも考えています。

——30年以上、ずっと漫画を描き続けていらしたわけですもんね…。

もっとさっさとやめると思っていました(笑)。投稿しているときも「向いていないかもしれない」と思っていましたし、デビューしてからもあまりいい評価を受けなかったですし。

漫画を書くこと自体が好きという気持ちはあるんですが、ネームが本当にしんどくて「私は漫画が得意じゃないんだな……早々にやめるんだろうな」と思いながら描いていました。

——なぜ続いたのだと思いますか?

仕事をくれた、当時の編集部のおかげですね。仕事をいただくから、次も頑張ろう、と思う……そういうサイクルがあったから続けることができたんだなと思います。

——今、長く漫画家をやってきてよかったと思いますか?

よかったです、本当に! とても自分勝手な人間なので(笑)、脳内の自分勝手に作った世界、仮想世界で遊ぶことができたのがよかったですね。なかなかおもしろい仕事だなと思っています。