「縦スクロール・フルカラーでセルフリメイクがしたい」

——今デジタルのお話が出ましたが、読書環境も作画環境も一気にデジタル化が進みました。この変化をどう捉えていらっしゃいますか?

私もコロナ禍以降、半ば強制的に作画環境をデジタル化することになりました。今はネームからすべてiPadで描いています。

デジタルでしかできないこともいろいろ試せたし、アシスタントさんたちがご自宅で、自分のペースで作業できるようになったのもよかったです。

——漫画の形式にも、縦スクロールのような新しいものが出てきましたね。

すごく楽しいな、と思います。いろんな形式で表現できるようになってきたのは、漫画にとっていいことですよね。

もちろん今までのモノクロのコマ割りされた紙の漫画もしっかり残ると思うのですが、どんどん新しい形式も取り入れていかないと、漫画という文化自体がなくなってしまうかもしれない、と思うようになって。

最近はドラマやアニメのような「映像」「動画」しか観ないという人も増えていますよね。ドラマ化やアニメ化されて、それがおもしろければ原作漫画も読むというように、漫画の入り口も動画の場合が多い。

動画は「ちょっと観てみて」と人にも勧めやすいですが、世代によっては今後「この漫画読んでみて」と勧めるのが難しくなるのかもしれないと思っています。

——『メイちゃんの執事』も、ドラマ化されたことで原作を読んだ方も多いですよね。きっかけがなければ、能動的に「読む」という行為自体にハードルを感じる人もいるかもしれません。

その中で、縦スクロール・フルカラーの作品が、漫画の形式のひとつとして皆さんに受け入れやすいのだとしたら、どんどん取り入れていかないと、と。

これは私の夢なんですけど……セルフリメイクを縦スクロール、オールカラーのような形態でやりたくて。物語も今の時代に沿ったものに再編集して、リリースしてみたいんです。

——今ある原稿を縦スクロール用に変換するのではなくて、描き直すのですね。

ネームから切り直したいです。縦スクロールだと画面の作り方が違ってくると思うので、ストーリーの流れ自体も変わるかもしれない。世界線を変えるかもしれないですね。

ある分岐点で、縦スクロールのほうは「マーガレット」の連載版とは違うストーリーになって、違うラストを迎える。そういうのも面白そうだなと思います。

【漫画あり】「漫画家は孤独。何のために描いているんだろうと思うこともある」–––「メイちゃんの執事」シリーズ・宮城理子が32年間漫画を描き続けられた理由_2
『メイちゃんの執事』をフルカラーで、さらには違う展開で、再び読める日が来るかもしれない

——わくわくしますね。ぜひ読みたいです!