熱帯の地へ
暑かった。ベラクルスは、いつ来ても暑い。もわっとした空気が体中にまとわりつく。
ベラクルス州、コルドバ。熱帯に近い気候でジャングルが生い茂っている土地である。遠くには、霊峰オリサバを見ることができ、海が近いせいもあって空気は湿気をはらんでいる。朝起きると、南の鳥たちが甲高い声で合唱をしている。人々は涼しげな服をまとい、いつも額に汗を滲ませている。人々の肌は浅黒く、健康的に日に焼け、厳しい日差しがそこかしこに降り注ぐ。それが、ベラクルス。そして、このコルドバの先に、パトロナスの人々がいる。
彼女たちと連絡を取るのは至難の業だった。メキシコではよくあることなのだが、取材相手があまりにも田舎に住んでいると、まずインターネットがない。そのために、電話で連絡を取るしかないのだが、その電話すら、いくら鳴らしてもつながらないときが多い。そんなときはどうするのか? また鳴らすのである。鳴らしても出ないときは、出るまで鳴らす。 これが第一の鉄則。それでも、出ないときは? 実際に行ってみる、である。
文/嘉山正太 写真/shutterstock
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