5人で手分けして3000本のリクエストを徹底リサーチ
林 トロマ特集は社内からのリクエストの例ですが、ユーザーの方からのリクエストは年間3000本ぐらい来ています。それに対して、ここにいる5人で手分けして、大真面目に1つ1つ調べるんですね。
これはU-NEXTで過去に配信したことがあるのか、あったとしたらなぜ今落ちているのかとか。逆にうちでやっていなかったら、どこが権利を持っているのかを探しにいく作業を延々とやるわけです。
おかげさまで、未公開映画も含めて多くの作品が実現に至っています。
君嶋 リクエストが多かった作品では、『フラッシュ・ゴードン』(1980)があります。これはカルト的人気を誇るSFアドベンチャーで、僕も個人的にずっとリクエストしていた作品なんですが、リクエストを整理していた中でも、ユーザーからの要望がとても多かった。そこで国内で権利を持ってそうなところにヒアリングをしたのですが、そこにはビデオ権だけで配信権はなく。
権利を持っていそうな会社のリストを国際部にお願いして当たってもらい、最終的にカナダのある会社が、権利を持っていたという感じです。
ほかにも、DVDとかブルーレイが廃盤になっていて、さらに内容的な問題でレンタルや地上波でも放送できないものもあります。
ジェフ・ブリッジスとティム・ロビンス共演のスリラー『隣人は静かに笑う』(1998)は見ることができない作品として有名でした。グロいとかではないんですけど、多分政治的な内容だと思います。これは劇場公開作ではありますが、U-NEXTではこういったレア作品も多く配信しています。
宮嶋 苦労は全然していないのですが(笑)、「ケリー・ライカート特集」は、権利元さんとの信頼関係がいい結果につながった結果だと思います。配給元が配信権も持たれていたのですが、U-NEXTが公開規模は小さくても良質な作品を積極的に配信していることをご理解くださっていて。うちに最初にご提案をいただき、先行独占配信が決まったという流れでした。
ほかにも、プライベートで見に行った上映ティーチインの後、監督に直接お声がけして配信につながった作品も、いくつもあります。やはりU-NEXTに対する信頼を感じることが増えていますね。地道に実績を重ねて、そうした信頼関係が築けていることはすごくありがたいです。
林 そうですね。今は配給元と一緒になってプロモーションをし、盛り上げることもしています。「U-NEXTで作品を大事に扱ってほしい」と言っていただくこともあります。金額面も含めて、評価いただいていると実感しています。
U-NEXT映画部特集#1でもお話しした通り、現状U-NEXTの配信作品は15,000タイトルを超えていますが、目標は3万本です。地道に多くの作品を揃えながら、レンタル店でいうところの棚組を充実させるイメージで、特集を積極的に組んでいます。僕らは“セレンディピティ=偶然の出会い”をユーザーのみなさんに提供したいと思っているんです。
自分が好きなものばかり目に入ってくるのが、今のスマホ文化。セレンディピティが生まれにくいのがデジタル文化の特徴です。でもU-NEXTでは、そうじゃないアプローチをしていこうよと。
今はレンタル店もだいぶ数が減っていますが、その偶然の出会いができたレンタル店っぽさを、これからも試行錯誤しながら目指していきたいと思っています。
取材・文/今祥枝
U-NEXT映画部特集#1 U-NEXT映画部が習い目指すのはレンタルビデオ店の最終進化系!
U-NEXT映画部特集#2 新社会人におすすめしたいエンパワメント映画5本
U-NEXT映画部特集#3 サメ、モンスター、ゾンビ…タイパくそくらえムービー
U-NEXT映画部
2023年4月現在は総勢5名。100社を超える映画会社と向き合いながらの作品調達、映画作品をテーマ別にキュレーションした特集の制作、「ONLY ON U-NEXT」として打ち出す独占先行作品の選定と交渉、映画作品への出資、映画祭との連携等々、映画に関することの全般を手掛ける。
U-NEXT
https://video.unext.jp
U-NEXT映画部のnote
https://note.com/unext_movie