ようやく気球撃墜体制を整えた日本
今回の気球騒動により、闇から闇に葬られるはずのインテリジェンス戦争が衆目に晒されることとなった。
日本でも2019年頃から青森や宮城上空などで正体不明の気球が何度も目撃されている。「再飛来の可能性は?」と記者に問われ、政府・自民党が「気球に聞いてください」(河野太郎防衛大臣・当時)と呑気に答えていたことは記憶に新しい。
今回の気球をめぐる米中の暗闘を見て、ようやく日本も危機感を持ったのか、政府与党はこの3月、気球を撃墜できるようにそれまであいまいだった無人機への武器使用基準の明確化へと踏み切ることになった。
偏西風の「不可抗力」とメディアイベント化という偶然。そして中国軍のグローバル偵察戦略という必然がもたらした「スパイ」気球をめぐる攻防は日本にも防衛意識の変化をもたらしたと言えそうだ。
取材・文/小西克哉 写真/AFLO