バラエティ番組としては面白いとしても…

それにしても、『タモリ倶楽部』がなくなってしまった後、こういう変わった趣味を持つ人の受け皿はどうなってしまうのだろう。

いや、最近は『タモリ倶楽部』でも素人趣味人の出演は減っているし、他にもそういう人が出るテレビ番組あるじゃんと言われる向きもあろう。

しかし違うのだ。

他の番組はテレビのどうしようもない性(さが)として素人をいじってしまう。その趣味をその趣味のままで受け止めず、料理しようとしてしまうのだ。

たとえば『マツコの知らない世界』(TBS)や『激レアさんを連れてきた。』(テレビ朝日)は、いずれも変わった人を紹介する番組だが、基本的にその番組のテンプレートにはめこみ、マツコ・デラックスやオードリー若林があれこれコメントするスタイルだ。

この形式であればテレビバラエティとして面白みは増すし、何より番組として安定はするだろう。当然にしてこれはこれで正解であるし、間違っていると言うつもりもない。
しかし趣味人にとってここに出ることは誇りだろうか。

『タモリ倶楽部』のタモさんは何が違うのか

誤解のないように言っておくが、マツコや若林が悪いのではない。彼らはそういう役割を期待されているし、番組として成立させるために一流の料理人として腕を振るっている。時にはできるだけその素材の良さを引き出そうと努力してくれたりもする。

しかし、調味料をたくさん加えれば加えるほど、盛り付けをきれいにしようとすればするほど、趣味人の考える「本質的なその趣味の魅力」は見えなくなってしまう。

『タモリ倶楽部』は違う。いや正確にいえば『タモリ倶楽部』のタモさんは違う。

趣味人と同じ目線で、ただその趣味をそのまま味わってくれる。もちろんタモさんの口に合うこともあれば、合わないこともある。しかし合わなくても、そこで無理に合わせようとしたりはしない。番組を成立させることに気を取られることなく、ただただ趣味に向き合ってくれる。

そこにはタレントと素人という壁はなく、人と人とのコミュニケーションがあるだけだ。

テレビタレントでそこまでの境地に達する人が、今後そう簡単に出てくるとは思えないし、出てきたとしてそれを許す番組もなかなか作れるものではない。