大晦日に紅白を見ないなんて、
非国民か天邪鬼か!?と思われていた時代
まもなくやって来る大晦日、あなたは「NHK紅白歌合戦」を見ますか?
昨年、2021年の第72回「NHK紅白歌合戦」の平均視聴率は、前半が31.5%、後半が34.3%で、2部制になった1989年以降のワースト記録を更新してしまったらしい。
テレビ離れが進む昨今では、それでもすごい数字であるには違いないが、全盛期を知る一定の年代以上の人からすると隔世の感だろう。
何しろこの番組、正式に記録が取られるようになった1962年からの視聴率を見ると、70%台は当たり前。
1962年の第13回、1963年の第14回、そして1972年の第23回と、3度も80%台の平均視聴率(平均ですよ、平均)を叩き出した、超お化け番組だったのだ。
本当に、大晦日に紅白を見ないなんて非国民かよっぽどの天邪鬼か!?という時代が確かにあった。
僕がNHKホールの客席から生で観た1983年の第34回紅白歌合戦も、平均視聴率は74.2%もあったそうだ。
その年、中学2年生だった僕は立派な厨二病を発症していて、普段はパンクやニューウェーブのレコードばかり聴きあさり、「テレビでやるような歌謡曲なんてクソダサい」と公言して憚らない、やや痛い少年だった。
そんな僕だが、親が毎週購読する『TVガイド』に掲載されていた応募要項を見てこっそりとハガキを出し、まんまと当たったお一人様観覧券を握りしめて、大晦日の渋谷・NHKホールにいそいそと向かったのだ。
頑ななパンクボーイにアンビバレンツな気持ちを抱かせながら幻惑するほど、当時の紅白は不思議な魔力に近いパワーを持つ番組だったのである。
そんな僕が目撃した全盛期の紅白歌合戦の模様を、DVDに焼いて手元に残してあるオンエア映像と、頭に強くこびりついている記憶をもとに振り返ってみたい。