多様性と正しい理解による選択を

アプリのサイドローディング問題については、現在、世界中の規制当局で議論されている。AppleとGoogleが本拠地を置く米国でも「競争環境が保たれてない」と見られているうえ、今後は欧州でも「サイドローディングを解放すべき」として米国企業に対する攻撃が強まることが予測される。

アプリ流通は、AppleやGoogleがモバイルOSから組み立ててきたビジネスであることから、すでにプラットフォームとして世界を二分する勢力となっており、“第3の勢力”の登場は正直なところ現状期待できない。

そのため、サイドローディングを含む市場の公平性・多様性はもちろん議論されるべきポイントだが、その一方で個人情報を狙い、それによって利益を得ようとする悪意のある開発者からデバイスを防御する仕組みは絶対に欠かせない。

その点で、日本の公正取引委員会が、モバイルOSやアプリストアの競争環境確保の条件に「セキュリティとプライバシーの確保」を設定しているのは、非常に冷静かつ現実的な判断だといえる。

AppleやGoogleは現在、アプリストアを通じてセキュリティとプライバシーを担保している。筆者としては、ユーザである我々がその仕組みや危険性を理解できるようにならなければ、サイドローディングの義務化は、まだ当分先の話になるのではないかと思う。

「サイドローディング」を巡って日本政府とAppleが大激論。アプリ市場の“自由な競争”にAppleはなぜ「断固反対」するのか?_6
Appleの発表によると、2021年にはApp Storeによって約15億ドルの不正取引が阻止されたという(写真:apple.com)
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文/松村太郎