サイドローデングのメリットとは?

では、サイドローディングにはどのようなメリットがあるのだろうか。

そもそもiPhoneと市場シェアを分けるAndroidスマートフォンでは、基本的にサイドローディングが可能で、Google Play以外のアプリストアからもアプリをダウンロードすることができる。

たとえば、規約違反でApp StoreとGoogle Playから姿を消したEpic Games社の大人気ゲーム「フォートナイト」は、サイドローディングが認められるAndroidにおいては、同社独自のアプリストアからダウンロード可能だ。

つまり、15%からというApple・Googleの手数料を回避してビジネスの収益性をより高めたいと思う大規模な開発者は、サイドローディングが許可されれば、アプリストアを独自に用意して自由にアプリを展開することができる。これが、ストアを丸ごと開発できる体力がある大規模開発者にとってのサイドローディングのメリットだ。

また小規模な開発者や研究者などにとっては、AppleやGoogleのアプリ審査基準、技術要件に沿わない、より実験的なアプリを作って広く配信したいという場合には、サイドローディングに頼らざるを得ない。

たとえば、昨今AI(人工知能)の実用化が大きく注目されているが、App Storeの審査基準に沿ってアプリを開発する場合は、せっかくiPhoneに優れた機械学習処理のチップが内包されていても、アプリ内でデータを学習させることは現状できない。

つまりサイドローディングが認められれば、独自のアプリストアというビジネス展開を可能にするだけでなく、より低廉な手数料によって収益を向上させ、また、現在審査が通らないアプリを流通可能にする、といったさまざまなメリットを享受できるのだ。

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iPhoneにアプリをインストールするには現状App Storeを経由しなければならない

ただし、ユーザー・開発者ともに必ずしもサイドローディングがなければならない、と考えているわけではない。

もちろんAppleやGoogleが設ける要件の中でも、優れたアプリを開発することは可能だ。実際、AppleもGoogleも、スマートフォンの可能性を広げる新しいアイデアに対して協力的であり、アプリ審査に関しても、技術面だけでなくビジネス面でより良い提案も加えられてきた。

またサイドローディングが許可されているAndroidにおいても、8割以上のユーザーがGoogle Playを利用しているとの調査が、後述の公正取引委員会から出されている。

たしかに現状、AppleとGoogleによってアプリストアは非常にクローズドだが、これは「競争の結果」と見るべきだ。Apple、Googleがユーザーの体験価値、開発者への提供価値を高め、双方から選ばれるアプリストアとなり、AmazonやMeta(旧Facebook)、Microsoftといった巨大テック企業を含む他社が、その競争についていけなかったに過ぎないと言えるのではないだろうか。

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Appleはアプリ開発者をサポートする「App Store Foundations Program」を展開する(写真:apple.com)