きれいな線よりかさついた線が好き

【漫画あり】なぜ漫画『NEETING LIFE ニーティング・ライフ』は今の時代に響くのか?漫画家・筒井哲也の「現在起きている事象、同時代性を重視している」オリジナリティ_3
瓦礫と化した街並みの下絵。この絵は完成までに3日間要した

――『ニーティング・ライフ』は、これまでの絵柄から少し変わったように見えたのですが、作画に関して変化した部分や意識された部分はありますか?

基本的にアナログで描いて、デジタルで仕上げるスタイルは変わっていません。『有害都市』の頃はシャーペンで描いた線を取り込んでいて、『ノイズ【noise】』からつけペンに変えたぐらいです。

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上の下絵は完成までに20枚のレイヤーを重ねて仕上げを施した

――小森のキャラクターデザインが今までの作品より丸いので、そう思ってしまったのかもしれません。

そうかもしれませんね。だけど、いま見返してみると小森の顔がかなり変わっていますね。ここは、いまいちだな……。

――この絵が「いまいち」なんですか!? 

なんかバランスが悪いと気になっちゃうんです。落ち着いたらデッサンしないと。

――飽くなき向上心ですね。理想の線が頭の中にあって、それに向かっていくという感じでしょうか。

そうですね。デジタルだとめちゃくちゃキレイな線が引けるのですが、僕自身はかさついた感じの線が好きだったりするんです。メビウス(バンド・デシネの最重要人物)の線とか、ほんとうにいいなと思っていて。(蔵書を開きながら)カッコいいですよね。ここまで写実的にしちゃうと、マンガとしてはちょっと動かしにくいんですけど。

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蔵書にあったメビウスの著作をパラパラとめくる筒井さん

――筒井さんの作品はフランスでも評価が高いですよね(『有害都市』がコミック評論家・ジャーナリスト協会賞(ACBD)2015で最優秀賞受賞など)。

ありがたいことです。