自分の出演作は客観的に見られない

「異性愛者視点の同性愛者像になってしまわないように」「セックスは現代の恋愛においてとても大切な恋愛の一部」…映画『エゴイスト』でゲイを演じた鈴木亮平の思い_5

──完成した映画を見た感想を教えてください。

東京国際映画祭や試写で見てくださったみなさんは「よかった!」とおっしゃってくださるんですが、僕は自分の出演作は客観的に見られないんです。この作品に限らず、いつもそうですね。

特に今回はドキュメンタリータッチで撮影しており、松永監督から「浩輔として生きてくれ」と言われていたので、何の計算もせず、ただ浩輔として生きた自分がスクリーンに映し出されていました。どこか不思議な感覚でしたね。自分の感想と出演作を見てくださった方の感想が異なることは大なり小なりあるのですが『エゴイスト』は僕の出演作の中でも一番それを感じます。

自分のホクロの位置は知っていたけど「こんな風に見えるんだ」と思ったり、自分のうなじをこの映画で初めて見たり(笑)。

──うなじ、すごく綺麗でした!

ありがとうございます(笑)。ミヤタさんに紹介していただき、ゲイの方に人気の美容院で刈り上げたんです。すごくセンスのいい美容院だから、ここで浩輔のヘアスタイルを整えてほしいと言われて。綺麗に刈り上げてもらえてよかったです。

映画は知らない世界を追体験できる

──『エゴイスト』は、LGBTQに関する理解が深まったり、その世界を知るきっかけになったりと影響力が大きい作品だと思うのですが、鈴木さんの人生に大きな影響を与えた映画はありますか?

たくさんありますよ。映画が好きで俳優になりたいと思ったくらいですから。映画の魅力は、自分の知らない世界を見ることができること。まるで自分事のように思えるじゃないですか。

『エゴイスト』の場合は、浩輔と龍太の恋愛を自分事のように捉えることができる。映画は描かれる世界を追体験できるので、そのよさはどの映画にもあると思います。

──知らない世界を知ることができるのは確かに映画の魅力ですよね。

だいぶ前の映画ですが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)は、印象に残っています。主人公のマーティ(マイケル・J・フォックス)が過去にタイムトラベルをしたとき、若い頃の母に熱く迫られるんです。

「私が若い頃は、男の人と手を繋ぐこともできなかったわ」とか息子に言っていたのに、実際は「おかん、ガンガンくるやんか!」みたいな(笑)。あの映画を見たとき、「タイムトラベルってこういう感じか」なんて思ったりしました。

──鈴木さんが学生時代などに夢中で見ていたのは、アメリカ映画が多いのですか?

そうですね。ハリウッド映画全盛期でしたから。学生の頃は派手なアクション大作などが好きでした。映画スターでは、最初はジャッキー・チェンのファンになり、そこからケヴィン・コスナー、マット・デイモン、ショーン・ペンへ。自分が成長するに従って、アクション俳優からシリアス俳優へと好きな俳優が変化していきました。

──ご自身が俳優になると、見るポイントも変わっていくのではないですか?

最近、ケヴィン・コスナーの主演映画『ボディガード』(1992)を改めて見たのですが、ケヴィン・コスナー、めちゃくちゃ上手い。特別なことは何もしていないように見えるけど、実はすごく緻密に表現している。その表現力に驚きました。自分が同業者になったからこそ、初めてわかることがありますね。

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──最後に、『エゴイスト』を楽しみにしている映画ファンに向けて、メッセージをお願いいたします。

伝えたいことはあるのですが、伝えるのが難しい映画でもあるので、まずは見ていただきたいです。浩輔と龍太のラブストーリーだけでなく、この映画には家族も大きく関係していますし、浩輔の生き方を描いた物語でもあります。

僕はこの映画を撮影しているとき、浩輔と龍太の恋愛や龍太の母親(阿川佐和子)の思いなど、まずは誰よりゲイの方々の心に響く作品にしなければと思っていました。でも試写を見てくださった女性からの反響がすごくて驚いています。

僕からは「とにかく見ていただきたい」ということと「感想を僕のTwitterにください」とお願いしたいです。みなさんがこの映画で何を感じたのかを読んでみたい。楽しみにしているのでよろしくお願いします。