宮沢氷魚さんが龍太で本当によかった
──映画に出演しているドリアン・ロロブリジーダさんも、俳優としてだけではなく、製作に関わっているそうですね。
ドリアンさんは高山さんをよく知る方なので、高山さんの話を聞いたり、アドバイスをいただいたりしましたし、撮影前にゲイの方達に集まっていただき、座談会を開催してくださったんです。これもとても参考になりましたね。
また、劇中で僕が、ちあきなおみの『夜へ急ぐ人』を歌うパフォーマンス指導もしてくださいました。細かく指導していただいたのですが、現場に行ったら監督から「もっと思い切り弾けようか!」と言われて(笑)。結果ドリアンさんのイメージ通りになったかどうかわからないのですが、浩輔が『夜へ急ぐ人』を歌う意味など、根底に流れる精神を知るきっかけを作ってくれました。
──宮沢氷魚さんとの共演はいかがでしたか?
宮沢氷魚さんとは初めてお会いしたのですが、僕は最初から龍太のようだと感じました。人としても龍太のようなピュアさを持っている方で、人間的にも魅力的でしたし、相性がよかったと思います。龍太が宮沢さんで本当によかったです。
──演じるにあたり、おふたりでディスカッションすることはあったのでしょうか?
ディスカッションはしなかったですね。話し合ってしまうと失われていくものが多いような気がして。僕と宮沢さんが演じるのは恋人同士なので、感情を大切にしたかったんです。作品によっては共演者と話し合いながら作っていく場合もありますが、この映画に関しては宮沢氷魚さんではなく、彼を龍太として見ていたかったので。
特に松永大司監督はドキュメンタリーのような撮り方をされる方で、現場で「自由に話してください」と言われることもありました。だから現場に入るときから、僕は浩輔としてそこにいないといけない。ワンシーン、カメラは回しっぱなしなので、そこはすごく気をつけました。
セックスシーンで作品が得るものは大きい
──『エゴイスト』はセックスシーンもしっかりと描いています。ラブストーリーにおけるセックスシーンは、どのようなものだと思いますか? 松永監督とは描き方についてお話しされましたか?
セックスは現代の恋愛においてとても大切で、恋愛の一部だと思っています。セックスシーンを描くか否かは作品のテイストにもよりますが、それを描くことによって、ふたりの関係性が伝わるし、どのように愛し合っているのか、その愛の深さも伝わる場合があると思います。
『エゴイスト』では、ふたりが初めて体で結ばれた後、関係がどのように変化していくのかが描かれていくので、僕は描くことで得られるものは大きいと思いました。
ただセックスシーンは、すごく匙加減が難しいとも感じています。あまりファンタジーに寄りすぎてもいけないし、かといって性的な印象が強すぎても、違うメッセージが上乗せされてしまうかもしれない。そういう問題点をクリアするために、この映画ではintimacy choreographer(※)のSeigoさんからアドバイスをしていただきながら進めました。
※セックスシーンなど「インティマシーシーン」における動きや所作を監修
──具体的にどういったアドバイスだったのですか?
男女、男性同士、女性同士では、インティマシーシーンの細部が違ってきますので、今回はSeigoさんに男性同士の所作を指導していただきました。
ゲイの方々が見ても違和感を抱かないようにと細かく指導してくださったので、本当に助かりました。