いろんなシーンで泣いてしまった

愛する妻と娘を失う難役に挑んだ大泉洋。「できることなら避けたい役だった」_1
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──大泉さんが演じられたのは、妻と娘を事故で失う小山内堅役。初めて脚本を読まれたときの印象を教えてください。

最初は大変辛い役だなと思いました。撮影とはいえ2ヶ月間、小山内の思いを抱えて生きるのは苦しいなと。正直な話、できれば避けたい役でした。

脚本を読んで泣いてしまったんですが、どこか、それだけに終わらない前向きになれる要素があったし、色々な話が見事に絡み合って成立していると感じましたね。

僕が演じる小山内は家族を突然失ってしまうわけだけど、目黒(蓮)君と、有村架純さんのラブストーリーが小山内の人生にまで関わってくる。その関わり方がとっても絶妙で、脚本としておもしろかったです。

──特に印象的だったシーンは?

事故に遭った妻と娘を確認しに行く遺体安置所のシーンです。セットに入った瞬間から、「あ、ダメだ、ダメだ。ここにはいられない」という感じだったんです。

そしたら監督が、「僕はこの映画で、大泉さんが涙を流すのはこの1回でいいと思っている」と言っていて。ただ、「別にここは泣く必要ない」と言われたところでも、いろんなシーンで泣いてしまいました。

愛する妻と娘を失う難役に挑んだ大泉洋。「できることなら避けたい役だった」_2

──だからこそ、小山内の辛さが見ている側にもよりリアルに伝わってきました。

小山内って、家族を失ってからずっと心に蓋をして生きてきたと思うんですよね。ところが、そこに目黒くん演じる三角が突然現れて、「あなたの娘さんは、ある女性の生まれ変わりだったんじゃないか」なんて、無理くり傷口を開くようなことを言われるわけです。

ずっと見ないようにしていた娘のアルバムを久しぶりに開いたりするシーンは、もう一度娘に会えたような気がしてね。要所要所で心が大きく動かされました。

──劇中では28歳から55歳までを演じられましたね?

28歳あたりはもう、諦めてましたね。だってこっちは49歳ですから。僕の仕事じゃないなみたいな感じ(笑)。そこは衣装さんとメイクさん、セットで時代感を出していただいて。僕自身は明るく元気に演じました。

なるべく順撮りにしてもらったので、前半の家族との撮影では、楽しく幸せなシーンが多かったんです。だから私生活でもちゃんと食べて、多少太っていてもいいくらいに思っていました。

大変だったのは、やっぱり歳を取ってからですね。妻と娘を失ってから数年飛ぶので、僕の撮影は少し時間を開けてもらって、数日で体重を落としました。ご飯をあまり食べられないし、後半はいよいよ厳しい撮影でしたね。