カリスマ波動アーティストとはなんぞや?
──映画『嘘八百 なにわ夢の陣』(2023)で7年ぶりに映画出演をされましたが、依頼があったときのこと、カリスマ波動アーティストTAIKOHという謎に包まれた役についてお話を聞かせてください。
僕は『嘘八百』のシリーズが大好きなんです。『嘘八百』(2018)『嘘八百 京町ロワイヤル』(2020)も見ていたので、シリーズ最新作の出演依頼は本当にうれしかったです。
ただ、キャラクターの説明をいただいても最初はよくわからず、「カリスマ波動アーティストとはなんぞや?」と思いました(笑)。
──確かに。すごい肩書きですよね。
人間離れした男なのかと思っていましたが、台本を読み込んでいったら、謎めいた肩書きゆえの悩みを抱え、それを貫く生き様や、未来に夢を持ったロマンのある男だと思いました。
──TAIKOHの雰囲気作りなど、どうされていたのですか?
カリスマの身につけ方なんてインターネットで調べても出てきませんから(笑)、立ち振る舞い、手の動かし方、表情、姿勢、キャンバスに対峙したときに放つTAIKOHの独特の空気感っていうのを考え、最大限表現しようと意識して演じました。
自分なりに「カリスマとはこういうことかもしれない」と意識して演じたことが映画に反映されていた……と、自分のこと褒めときます(笑)。
──役作りについて、武正晴監督とはお話をされましたか?
撮影に入る前に監督と打ち合わせしました。僕が絵を描くことを監督はご存じで、「絵はどういうときに描かれるのですか?」と聞かれたので「自分の中に描きたい世界が降りてくるまで待ちます」とお話ししたり。
描くときの動作を見せたら、監督が「それです、まさにそれ!やはり安田さんはTAIKOH のイメージにマッチしているなあ」と言ってくださって。そこから細かく役について話し合って、TAIKOHのスタイルを作っていきました。
──最初はあまり語らないTAIKOHですが、徐々に内面が現れてきますよね。
会社の代表・山根寧々(中村ゆり)と対峙するとミステリアスなTAIKOHの素の部分が現れてしまうんです。ふたりの関係性が、TAIKOHを表現する上でポイントになっていると思いました
──完成した映画をご覧になった感想は?
「武監督、あっぱれ!」と思いました。自分が出演している映画ですが、ファン目線で見てしまい「すごいショット! こう来ましたか〜」とか、いろんなシーンに感動と驚きがあり、ワクワクドキドキしっぱなしでした。
『嘘八百 なにわ夢の陣』は、総合エンターテインメントの世界。武監督が「才能ある人間同士を繋ぎ合わせてチームを作り上げるまでが大変なんだ」とおっしゃっていたのですが、そんな風に大変な思いをしてチームを作り上げたからこそ、すべてにおいてクオリティの高い作品になったんだと思います。
──本当に『嘘八百』シリーズがお好きなんですね。
小池則夫(中井貴一)と野田佐輔(佐々木蔵之介)の掛け合いが好きですし、そのほかのキャストの皆さんの台詞回しのテンポのよさなど、この作品ならではだと思います。
『嘘八百 なにわ夢の陣』では、前半、貴一さんと蔵之介さんがなかなか出会わなくて、焦らされるんですよ。これも武監督の演出の妙なのですが、おふたりの丁々発止の掛け合いを早く見たくて仕方がなかったです(笑)