暴力団と関わりを持ち続ける元組員も
しかし、元組員が、就職するのが難しいという根本的な問題は変わらない。東京を拠点とする暴力団の組長N氏は「自分らのまわりでも元組員が、一般の会社に就職したという話は聞いたことがない」と語る。
「福岡県のように県や県警が積極的に協力体制を取り、元暴力団員の就職を支援することは稀だ。サポートしてくれる団体がなければ、職種はおのずとある程度決まってしまう」
福岡県警は2014年以降、特定危険指定暴力団工藤会の壊滅を目指し「頂上作戦」を実行。すなわちトップは逮捕し、組を離脱しカタギになった元組員らの生活や就職はサポートしているのだ。
N氏はこうも言う。
「もともと一般企業には入れないような人間が多いから、元暴力団、元組員というレッテルが就職できない理由ではない。ヤクザをやっていても食えないヤツは、いくらカタギになろうが一般企業に就職するなんて無理。職種を限定せずに仕事を探すなら、稼げる仕事はある」
暴対法やコロナ禍によりN氏の組の若い衆はほとんどが組を離れ、カタギとなっている。従事しているのは主に建設業や解体業だ。
「自分から応募して面接に行くのはハードルが高い。ハナから元組員だと明かしても色眼鏡で見られるだけで、雇う側も簡単には採用しない。仲間が働いているとか、知人友人の紹介を頼りに仕事を探すと同じ業種が多くなるのは当然」(N氏)
暴力団と共生しつつブローカーとして金を稼いでいるという元組員は、
「暴力団と組んで仕事をしているというより、手の届く距離に組織があるという感覚。どこまで手を伸ばすかは自分次第。情報の交換はするが、助けを求めることはない。仕事をしていく上でこれまでの人間関係は必要だし、自分が元組員だったと知っている人も多い。そこで稼いでいけるかどうかは自分の能力次第」
と言い切る。
経験や人間関係を生かして仕事をすれば、暴力団との関わりを断ち切ることはできないが、「仕事で一般人に迷惑をかけることはない。つかず離れずの絶妙な距離感は経験上、わかるので」と言う。