第4位:『ハウス・ジャック・ビルド』(2018年)
続いては、ラース・フォン・トリアー監督作、『ハウス・ジャック・ビルド』(2018年)に登場する建築士志望の連続殺人鬼、ジャックを推薦しよう。クセの強いキャラクターがしばしば登場することでおなじみのラース・フォン・トリアー作品だが、本作のジャックもまた、なかなかの〝やばさ〟を備えている。
本業は技師、だが一方で建築家や芸術といったものに対してあこがれを抱いているジャック。とあるきっかけから胸の内にひそむ殺人衝動を解放してしまった彼は、回収した犠牲者たちの死体を使ってあるものを作ろうとする。
正直なところジャックの殺しの手際は悪く、いまひとつ要領を得ない嘘で獲物を騙そうとしては危うく失敗しかけたり、絶体絶命の窮地を相手の油断のおかげで切り抜けたりと、標的の間抜けさや場当たり的な幸運に助けられている場面が多い。
そして強迫性障害の持ち主であり、犯行の雑さ加減とは矛盾してささいなことで神経質になる(ただし、強迫性障害は次第に収まっていったとのこと)。また彼は自らの犯行をさも高尚な創作活動であるかのように語り、ほかの芸術や歴史上の出来事を引き合いに出しては、少々自身に酔っているかのような口振りになる……。
このように、稀に見る殺人鬼としての〝やばさ〟と、誰にでもある程度は見られるような〝しょうもなさ〟の両方を備えたキャラクターである。
また、エンドロールで流れる、ジャックに捧げられし歌は必聴。