海外言語で埋め尽くされている
アニソンMVのコメ欄

the pillowsの海外公演と同様の現象は、翌2002年放送開始の『NARUTO -ナルト-』でも見ることができる。OPテーマとして「遙か彼方」を提供したロックバンドASIAN KUNG-FU GENERATION もやはり海外人気を獲得。海外でのライブにおいては、同曲をセットリストのハイライトに設定するほどの定番曲となっているという。

「日本のミュージシャンの海外ファンベースの多くがアニメを入り口としている」ことは音楽の世界でよく指摘されることだが、the pillowsとASIAN KUNG-FU GENERATIONの事例はその根拠となる代表例と言えるだろう。

そして、こうした「アニソン好調」のさらなる追い風となったのがインターネットの普及である。

ネットが可処分時間を奪う中、自然とTVドラマやCMが影響力を落とす一方、アニメはネット上の共通言語としてその地位を高め、また、その国際的人気が可視化されていったのだ。

YouTubeのコメント欄が日本語以上に海外言語で埋め尽くされているアニソンMVは、さほど珍しいものではないし、そのことをご存知の方も多いだろう。

さらには2015年にApple Musicが、翌2016年にはSpotifyが日本でサービスを開始したことにより、日本のミュージシャンやレコード会社が楽曲の再生数、そして世界各地のリスナー分布をはっきりと数値で確認できるようになった。

これらの数値は現在ツアー日程を組む際の指標としても活用されており、アニソンを手がけることの重要性をさらに示していることが容易に想像できる。

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90年代、いや00年代なかばまでは、いくらアニソンがその地位を向上させたとはいえ、硬派なアーティスト、特にロックバンドほど「アニソン=セルアウト」という見方を強く持っていたように思う。

実際、アニソンを手掛けたとはいえ、バンド側がインタビューやライブMC等で積極的にそれについて言及することは決して多くはなかった。だが、それは裏返せば、アニソンを手掛けなくてもまだある程度のCDを売ることができたからこその態度だったとも考えられる。

しかし、一方で売上とは無縁の、アーティスト側からのアニメへの“憧れ”も生まれつつあった。