インボイス制度は「増税」の始まり?
――今年は、2023年10月から導入が予定される「インボイス制度」についても議論が過熱しました。インボイス制度が導入されれば、従来、免税事業者だった売上1000万円以下の個人事業主やフリーランスが消費税の納税を迫られ「実質的な増税」になるとの見方があります。
たしかに、当面困るのは個人事業主やフリーランスの方々だと思います。収入は10%も減少するし、インボイス制度は請求に関する事務処理も煩雑になりますから。もちろん廃業する人も出てくるでしょう。
しかしさらに重要なのは、その先なんです。
――「その先」ですか?
インボイス制度の先に何があるのか。私は消費増税だと見ています。インボイス制度は登録番号を付与して、国が事業者ごとの消費税の納付額を把握する仕組みです。
例えば、フランスのように消費税率(付加価値税率)が20%、10%、5.5%、2.1%と細かく分かれている国は、インボイス制度が必要なんですよ。業種によって納付額が大きく異なるから、国がしっかり把握しなければいけません。
一方、日本の消費税率は10%と8%の2種類だけで、業種ごとの納付額もそれほど差はありません。でももしかしたら、インボイス制度導入後にフランスと同じように「3つ目の税率」が出てくるかもしれない。その結果、国民の負担する税額がさらに増える可能性は十分にあると思います。
実際に現在、防衛費増額をめぐって増税が検討されていますよね。そういうときに上げやすいのは、法人税でも所得税でもなく、消費税です。だから、私はインボイス制度の導入後に防衛費の増額が決まり、その先に消費増税が強行されるのではないかと睨んでいます。
――しかし、人口減少による税収減が見通されるなか、安定的な財源として消費増税を必要とする立場もあります。
そんなことありませんよ。だって、今年の税収は68兆円と過去最高だったじゃないですか。人口減少はもう10年以上続いているのに、税収はバブル期以上なんですよ?
だからもっと税収が増えるように、儲かっていない人からでも徴収できる消費税をどんどん上げていくというのでしょうが、経済が停滞しているなかで、税金だけをガバガバ取っていくから、日本から稼ぐ力が失われて泥沼に陥っているのです。
事実、財務省が発表している税金と社会保障費の国民負担率は46.8%の見通しです(令和4年度)。国民所得の約5割が税金と社会保障費に吸い上げられているんです。これは、つまり「五公五民」ってことじゃないですか。
――まるで江戸時代のようだと。
そうです。江戸時代の8代将軍・徳川吉宗は収穫米の5割を年貢として徴収する「五公五民」を行いました。すると農民の一揆が多発して、大変なことになったんです。
今、この国はそれと変わらない状況にあることを、多くの人が知るべきだと思いますね。
取材・構成/島袋龍太