2年連続3冠をかけた決勝…「怒られ役」の覚醒
若月はミスを繰り返してもメンバーから外されることはなかった。2年になると試合を重ねていくなかで課題と向き合って修正し、不動のフォワードへと成長を遂げた。
そして迎えた山形南とのウインターカップ決勝。ここで“ショー”が展開された。
相手の得点源でもある、身長2メートルのセンター・伊藤和哉を潰すため、ボールを運ぶガードにドリブル突破されたと見せかけ、畑山と田臥がスティールしてカウンターのゴールを奪う。
相手がロングパスで伊藤にボールを供給することも想定済で、今度は若月や菊地がパスカットしてターンオーバーを狙う。開始10分で39-4。早くも大勢は決した。
右足を痛めたためアシスト役に徹した田臥に代わって、若月も得点を量産した。134-77と大差が開いた試合で、24得点11リバウンドと気を吐いた、かつての「怒られ役」は、3冠達成に欠かせない男となっていた。
「最強チーム」の愉快な去り際
「常勝」と呼ばれる能代工では、優勝した時にだけガッツポーズが許されている。
マネージャーの西條の号令で応援団に挨拶すると全員が拳を掲げ、歓喜を分かち合う。そんななか、誰よりも喜びを爆発させていたのが、キャプテンの畑山だった。
優勝直後のインタビューでマイクを向けられた畑山が、口を開く前にリズムよく腰をうねらせるダンスを披露する。横にいた田臥も照れくさそうに、ぎこちなく踊った。
畑山がふき出しながら振り返る。
「前の日の夜に、田臥と『しっかり優勝しような。勝ったら絶対に俺らがインタビューに呼ばれるからやろう』って(ダンスを)練習してたんです。で、本当に自分がやったもんだから、『マジか……』って田臥、引いてましたね(笑)」
そんなキャプテンの姿に、監督の加藤は「なにやってんだよぉ!」と呆れながらも笑っていた。
3大大会14試合で100点ゲームは実に10試合。「最強のチーム」は、愉快に6冠を成し遂げた。
(つづく)
取材・文/田口元義



















