窪田正孝が命を削る音が聞こえた
たとえ、作品の中のほんの数分の出番だったとしても鮮烈に印象に残るーー窪田正孝はそういうタイプの俳優だと思う。それが如実に感じられたのは映画『マイ・ブロークン・マリコ』だ。
窪田が演じたマキオの登場シーンは、そこまで多くはないし、多くを語る役でもない。それなのに、鑑賞後にじんわりと思い出してしまう、そんな独特の空気を放っていた。
一方、映画『ある男』で窪田が演じた谷口大祐=Xは、それとはまた異なる空気感を醸し出していた。寡黙だが、幸せに身を浸した男がそこにいる。また、明らかになっていく彼の過去を演じる部分では、陰鬱とした中にも時に感情を解放する箇所がある。それが、あまりにも凄まじかった。あの咆哮は、命を削って芝居をしている音――そういわれても納得してしまうほどの迫力だった。
目で雄弁に語る俳優・間宮祥太朗
先述したドラマ『ファイトソング』では、菊池の恋敵であるミュージシャン・芦田春樹を繊細に演じた間宮祥太朗。普段あんなに目力のある間宮のちょっと自信も所在もなげな様子は、また格別の味わいがあった。
そこから一転、ドラマ『ナンバMG5』(フジテレビ)で見せたアツイ演技もまた、間宮の魅力が詰まっていた。ヤンキー漫画からそのまま飛び出した主人公・剛は、ともすればサムく映る危険すらあるが、そうならなかったところがまず間宮の演技力ゆえ。
家族に受け入れてもらえず、子どもみたいに顔をぐちゃぐちゃにして泣く様子、剛が愛した高校で殴り合いをしなければならなくなったときの決意の表情、すべてが終わった後のやるせない涙、どれをとっても筆舌に尽くしがたく、表情、特に目で多くを語れる稀有な俳優なのだと、改めて知らしめる芝居だった。
そして、それは今年公開された映画『破戒』でもいかんなく発揮。猪子蓮太郎(演・眞島秀和)の演説を聞いた後の希望の表情、その直後に訪れてしまった絶望、この大きな揺れを、雄弁にその目が物語っていた。
ラブストーリーもコメディーも社会派作品も。どんな作品の中にもなじんでいく間宮の、次なる演技が楽しみでたまらない。