「ナイトinナイト」の5番組はそれぞれライバル
TVerやGYAO!での配信が開始され、全国どこからでも番組が視聴できるようになった時代にあって、テレビ発のローカルバラエティだからできることとは何か――。今回は、「ナイトinナイト」枠の番組を制作するプロデューサーに、番組に懸ける想いや、賞レースや放送メディアの細分化による番組や制作体制の「変化」について聞いた。
「やっぱり会社の顔、中核ですね。視聴率や営業セールス的なことを考えても、この枠がダメになったら(局が)終わってしまうかもしれない。そういう意味で常に結果を出しつつ、一方で面白いことをやり続けないといけないだろうなと」
こう話してくれたのは、現在は『過ぎるTV』のプロデューサーを務めるABCテレビの下山航平氏。かつては同局のスポーツ部で5年ほど勤務し、阪神タイガースの番記者や、高校野球応援番組『熱闘甲子園』の制作などに携わった。その後、バラエティを制作する制作部に異動し、『今ちゃんの「実は…」』(08~22)(ナイトinナイト枠)や、松本人志が関西でレギュラーを持つことで話題となったロケ番組『松本家の休日』(14~21)の担当を経て、現職に。さらに『ABCお笑いグランプリ』や『M-1グランプリ』といった賞レースの制作にも関与するなど、まさにABCテレビにおけるバラエティの中核を担うポジションだ。
だが、北海道出身の下山氏が関西発のバラエティに触れたのは大阪の大学に進学した後。「ナイトinナイト」のことも知らなかった。
「地元が北海道で、周りに芸人になりたいという人も皆無でした。『めちゃイケ』世代なので人並みにバラエティ番組には触れていましたが、そもそもスポーツ部志望だったので、芸人にも詳しくなかったですし、まさか自分がバラエティを制作する立場になって、岡村さんや、松本さんの番組を制作することになるとは思っていませんでした」
「ナイトinナイト」は、現在は独立した5番組を包括するレーベルとして使われている。番組にはそれぞれプロデューサーも宣伝担当もついており、枠としてのつながりは緩やかなものだ。それでも各番組は影響し合っているという。
「プロデューサーごとに考え方が違うと思いますが、僕は各番組できちんと色分けしたものをやっていこうという感覚がありますね。最終的に『ナイトinナイト』という横並びで視聴者から判断されるので、そこは意識しています。なので、他の番組は仲間というよりも、ライバルという感覚が近い。例えば、“火曜日があのネタをやっているのだったら、こっちは別のネタにしよう”みたいなことはあります」