アニメのテーマソングが独立した楽曲としても
評価されるようになっていった経緯

テーマソングながら、歌詞になるべく直接的な表現を盛り込まず、曲の醸し出す雰囲気だけでアニメの世界観にリンクさせようといういささか難しい試みは、諸説あるが1978年放送開始のTVアニメ「銀河鉄道999」あたりから始められたのではないかと見られている。

“  汽車は闇を抜けて 光の海へ
 夢がちらばる 無限の宇宙さ
 星の架け橋 渡っていこう”

“  汽車は銀河をこえ さいはて目指す
 星は宇宙の 停車駅なんだ
 君を招くよ 夢の軌道が”

オープニンテーマ『銀河鉄道999』(作詞・橋本淳 作曲・平尾昌晃)は、ささきいさおと杉並児童合唱団という、従来のアニソンの王道をいくような歌い手が選ばれているし、歌詞はアニメのストーリーを婉曲ながらトレースするような内容にはなっているが、それまでの一般的なアニソンとは大きく違い、タイトルや登場人物につながる言葉を慎重に避けるとともに、主人公の目的や心意気すらも表現していない。

1979年に公開された映画版「銀河鉄道999」のために、ゴダイゴが提供した同名の主題歌も同じだ。
歌詞のサビに“The Galaxy Express 999”という言葉はあるものの、キャッチーなメロディに乗った語感の良さからオリジナル感が生まれ、たとえアニメの視聴者ではなくても楽しめる独立性の高い楽曲となっている。

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「銀河鉄道999」主題歌挿入歌集

このあたりが、アニメソングのターニングポイントとなったことは間違いない。

1981年にアニメ化された「うる星やつら」のオープニングテーマ、『ラムのラブソング』(歌・松谷祐子 作詞・伊藤アキラ/小林泉美 作曲・小林泉美)も注目に値する。

“  あんまりソワソワしないで
 あなたはいつでもキョロキョロ”

という歌い出しの、今でも色褪せないキュートなテクノ歌謡である。
この曲も『銀河鉄道999』の手法を踏襲し、独立した楽曲として十分に楽しめる作品に仕上がっていた。

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松谷祐子『ラムのラブソング』

そして、アニメ主題歌の“イメージソング化”は80年代になるとさらに加速していく。

1983年にはTVアニメ「みゆき」のエンディングテーマだった、H2Oの『想い出がいっぱい』(作詞・阿木燿子 作曲・鈴木キサブロー)が、スマッシュヒットした。

実は、「みゆき」のオープニングテーマ『10(テン)%の雨予報』(作詞・阿木燿子 作曲・鈴木キサブロー)もH2Oの曲なのだが、エンディングの『想い出がいっぱい』と比べると、人々の記憶にあまり深く刻まれてはいない。
『10(テン)%の雨予報』もH2Oらしい流麗な良曲なのだが、サビの歌詞はオリジナルから改変され、“MIYUKI you are my angel”と、主人公の固有名詞を連呼する、言うなれば旧態依然のスタイルだった。
それよりもイメージ的だったエンディングテーマの方が支持されたのは、現代に続くアニメソングのありようを示唆する出来事だったのかもしれない。

その後は1984年の“youはshock!”なクリスタルキング『愛をとりもどせ!!』(TVアニメ「北斗の拳」オープニングテーマ 作詞・中村公晴 作曲・山下三智夫)、1985年の杏里『CAT'S EYE』(TVアニメ「CAT'S EYE」オープニングテーマ 作詞・三浦徳子 作曲・小田裕一郎)、1986年の斉藤由貴『悲しみよこんにちは』(TVアニメ「めぞん一刻」オープニングテーマ 作詞・森雪之丞 作曲・玉置浩二)、1987年の小比類巻かおる『CITY HUNTER〜愛よ消えないで〜』(TVアニメ「CITY HUNTER」オープニングテーマ 作詞・麻生圭子 作曲・大内義昭)など、アニメ作品から離れても成立する優れたJ-POPが、一流ミュージシャンから主題歌として提供されるようになっていく。

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小比類巻かおる『CITY HUNTER〜愛よ消えないで〜』

1995年のTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のオープニングテーマ、『残酷な天使のテーゼ』(歌・高橋洋子 作詞・及川眠子 作曲・佐藤英敏)によって、その路線はより確定的になるのだが、その後のことはもはやクドクドと書くまでもないだろう。