「男性恐怖症がクスリ(覚醒剤)でなくなった」
女性は性被害のトラウマを負うと、対人恐怖、性行為の不感症、気分障害、摂食障害など様々な形で生きづらさを抱えることになる。彼女たちの中には、トラウマを忘れたり、生きづらさをごまかそうとしたりするために、薬物に手を染める者がいる。
たとえば、ある女性は小学生の時に2度にわたって見知らぬ大人からレイプをされた。それによって人とかかわることが怖くなり、人付き合いが苦手になった。
高校生になって人間関係に苦しんでいた時、彼女は先輩から「リラックスできてコミュ力がアップする」と勧められた覚醒剤に手を染めた。覚醒剤をやっている間は、不安が吹き飛び、誰とでも楽しく過ごせた。
これが転落のはじまりだった。彼女は覚醒剤をやれば真っ当に生きていけると思い込み、使用頻度を高めていった。ついには覚醒剤を買う金欲しさに売春をはじめるようになる。
「中学くらいまでは、トラウマがすごくて、男性に声をかけられるだけでも震えが止まらなくなるくらいでした。拒食とか不眠もひどかった。でも、クスリ(覚醒剤)をはじめたら、スパッとそれがなくなった。誰とも話せるし、セックスで感じるようにもなった。本当の自分にもどれた気がしました。それでだんだんとクスリを止めるのが怖くなったんです。クスリをやめたら、自分が自分でいられなくなるんじゃないかって思ったんです」
彼女の言葉である。
このように覚醒剤に頼ることで苦痛から逃れようとする女性も少なからずいるのだ。
さらに、矯正の現場でよく目にするのが「愛着障害」を抱えた女性だ。
性的被害に遭っている女性の中には、生まれ育った家庭の環境が劣悪で、親との愛着形成がうまくいっていない人も少なくない。