アイドルから経営者へ
――日本酒に関連した仕事といえば、イベントプロデュースやコラボ商品開発などもあると思います。酒屋を選んだ理由は?
単発の企画を続けていく選択もあったと思います。でも、私の中では大好きな酒蔵とお客さんをつないで、魅力を伝えていきたいという思いが大きかった。そのためにはどうしたらいいかを突き詰めていくと、酒販店を持つのが一番私に合っているという答えが出ました。
リスクは大きいです。だけど毎日お店に立ってお客さんと酒蔵をつないでいくことで、私の本気度も伝わっていくんじゃないかと考えました。屋号の「ゆい酒店」も私の名前の祐衣と“結ぶ”の意味が込められています。
酒蔵とお客さんをこのお店が結ぶという思いです。
――「ゆい酒店」は高野さんが社長をつとめ、現在、社員とともにふたりで切り盛りしていらっしゃいます。アイドルでの経験は活かされていますか?
経験が活きていることがあるとすればひとつだけ。コミュニケーション能力ですね。特に握手会では、初対面の方でも7秒くらいの間に何かしら話題を見つけて言葉をかけていました。何度も来てくださるファンの方は、前回話したことを覚えるようにしたり。10代の頃から数えきれないくらい握手会を繰り返しているので、相手をしっかり見て話す習慣は自然と身についていると思います。だから、接客もその延長線にあるような感じで仕事はとても楽しいです。
――日本酒の国内における売り上げが減少し続けている昨今ですが、日本酒業界を盛り上げていく上で、どんな展望を描いていますか?
日本酒は好みの味が見つかれば、必ず好きになってもらえるものと信じています。でも、それぞれの酒蔵がビールや焼酎のように大々的に広告を打てるわけではないので、実際に買って飲んでみようと思う機会があまりないのだと思うんです。日本酒の多くが無色透明で、SNS映えしづらいことも大きな原因のひとつかもしれないと思っています。
そこで、お酒を飲みたいと思う一番のきっかけって何だろう?と考えたとき、大人がおいしそうに飲んでいる姿を見ること、というのが私の行き着いた答え。「ゆい酒店」を拠点に接客を通して日本酒の魅力を伝えていく一方で、飲食店とのコラボや日本酒イベントにも積極的に関わっていきたいです。そこで、日本酒を飲んでいる大人ってカッコいいな、と若い世代の人にも感じてもらえるように、私自身も表に出て発信していきたいです!
後編ではそんな高野さんオススメの日本酒を紹介する。
取材・文/小林 悟
撮影/是永日和
企画・編集/一ノ瀬 伸
【店舗情報】
ゆい酒店
住所:東京都台東区西浅草2-16-7
電話:03-5830-3690
営業時間:11時〜19時
定休日:火曜日
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