巨大ネズミへの過酷な道のり

捜索開始から約2時間が経過し、時刻は深夜1時を迎えた。時間が経過するにつれ、街に出現するネズミの数もどんどんと増えてきた。もはや探さずとも、足元に視線を移せば至る所でネズミが移動しているのが見える。

それに比例して、捜索開始の頃よりも大きいサイズのネズミが出現し始めているようにも感じる。オープンチャット上でも、他の捜索隊が貼り付ける動画に映るネズミのサイズが明らかに大きくなっている。中には電線の上を歩くハクビシンを写真に収めた人もいた。
しかしながら、運営側から「目星の巨大ネズミを発見した」と認定された者はまだ誰もいなかった。

怒涛の勢いで更新されていたオープンチャットも、深夜3時を超えると少し落ち着き始めた。なおかつ、一種の“一体感”が生まれ始めたことに気が付いた。

「バッティングセンター辺りのゴミ捨て場にかなり大きなサイズのネズミが沢山いる」
「一番街の焼肉屋の前でもデカいネズミ発見」
「地下駐車場が怪しい」

それまでは各々が一攫千金を狙い、撮影した写真や動画を自慢げに一方的に送ることが多かった。しかし時間が経つにつれ、大きな個体のネズミが出た場所や、巨大ネズミが姿を現しそうな怪しい場所の共有が頻繁に行われ始めたのだ。

体力の消耗が激しかったからなのか、50センチ越えの巨大ネズミを発見することの難しさをそれぞれが痛感し始めたからのか。いずれにせよ、誰に指図されたわけでもなく「個人の成功」よりも「集団としての成功」に参加者の意識が向かい始めたのは確かだった。

もはや共通の任務を持つ一つの大きな集団、その名の通り“巨大ネズミ捜索隊”である。筆者たちは連帯感を強めた。

午前3時43分、運営側のスタッフから「日当を支払った方の点呼を取るため、カラオケ前に集合して下さい。また、捜索隊全員で集合写真を撮りたいので、4:10頃にゴジラ横の広場に集合して下さい」という知らせがオープンチャットで届いた。

タイムリミットが差し迫る。みんな最後の力を振り絞り、捜索のラストスパートに奮闘する。筆者も他の捜索隊の方々の姿から勇気をもらい、怪しそうなポイントをどんどん探していく。

他の隊員たちがオープンチャットに添付する写真・動画の中にはすでに、30センチは優に超えるのではないだろうかという、普通の生活ではまずお目にかかれないサイズのネズミが沢山いた。
だが、Z李氏が目撃したという大きな猫サイズの、50センチを超える巨大ネズミには、どの隊員もいまだ出会えていなかった。

謎の巨大ネズミを捕獲せよ! Z季の「#歌舞伎町巨大ネズミ捜索隊」に参戦してみた!_5
標準よりは大きなサイズのネズミ

時刻は午前4時。捜索終了だ。
筆者はヘトヘトになりながら、ゴジラ横の広場へと辿り着いた。他の隊員も集まってきて、最終的には50人を超える大所帯になった。

集合写真を撮り、運営スタッフが労いの声を掛ける。目的の巨大ネズミは発見できなかったが、それに準ずるサイズのネズミを発見したものには、後日別途ボーナスを支払う可能性もあるという。

「目星の巨大ネズミは発見できませんでしたが、良い経験になりました!」
「楽しかったです! また機会があれば参加します!」
「次はいつですか?笑」

と、隊員たちから元気な声が発せられる。みんな充実した顔をしているように見えた。巨大ネズミ発見という目的は果たせなかったが、間違いなく筆者たちは一つのチームとして、ゴールを目指して戦ったのだ。たとえ今日限りの関係だったとしても、束の間の同志と呼べる仲間が沢山できたのは疑いのない事実だ。

夏の終わりに、青春のようなひと時を過ごせたことに感謝したい。次こそは筆者たち捜索隊が、幻の巨大ネズミを必ず発見してみせる。

謎の巨大ネズミを捕獲せよ! Z季の「#歌舞伎町巨大ネズミ捜索隊」に参戦してみた!_6
最後の集合写真時の様子

※発起人のZ李氏から、本記事の記事化及び掲載の許可を頂いた上で掲載しています。

取材・文・撮影/佐藤麻水