夜の歌舞伎町に解き放たれる捜索隊
列に並び待つこと約30分。
運営側のスタッフが突然「これで日当の受付は終了です! 漏れた人もオープンチャットには入れます。これから捜索開始です!」と大きな声で発表した。
先着30名から漏れても、捜索隊の間で共有されるという“LINEのオープンチャット”の情報は貰える。〈巨大ネズミを発見できれば報酬を獲得できる〉ということだろう。
その掛け声により参加者の列は一瞬にして崩れた。日当をもらえないと知り、帰っていく者もいた。
急いで前方の運営スタッフの元に行き、スマホ画面に表示されているLINEのオープンチャットのQRコードを読み取った。
捜索隊が見つけたネズミの画像・動画をオープンチャットに貼り付け、それを「目星の巨大ネズミ」と運営側が認定すれば報酬が貰える、というルールだ。
早速「歌舞伎町巨大ネズミ捜索隊」と銘打たれたオープンチャットに入る。
なんと、その時点で150人近い参加者が入室済みで、トーク画面上は既に捜索を開始している人たちが撮影したネズミの写真・動画で既に溢れ始めていた。オープンチャットの人数はどんどんと増えていく。
筆者も足早に歌舞伎町の方へと歩き始め、捜索を開始した。
捜索する上で筆者がひそかに危惧していたのは、野生のネズミに噛まれでもしたら、破傷風か何かの悪いウイルスに感染してしまうのでは?ということだ。
そんな心配の声が運営側に伝わったのか、方針変更のお知らせがオープンチャットに届いた。
「発見しても捕獲は禁止。あくまでも写真・動画に限る」というルールに変更された。捜索隊が病院送りになるのは、責任問題として、運営側も避けたいのだろう。とにかくネズミと格闘する必要がなくなり、筆者は少しだけ胸を撫で下ろした。
周りを見ると、ハンディライトで道路の隅を照らしながら歩いている人や、長い棒で道端の草むらを突きながら探している人もいる。中には自転車に乗りながら、仲間と連絡を取り合い、ハイスピードで捜索を展開している人もいた。