日本メディアの報道姿勢は「共産圏並み」

アメリカのメディアでは選挙期間中に政敵の現在、過去を問わず、弱点をすべて白日のもとに晒すのが定石だが、この国では選挙期間になると政策討論番組はほぼ姿を消し、選挙が近づくにつれ、あたかも共産圏の体制かのように早変わりする。

参院選挙期間中の6月26日のNHK生放送「日曜討論」で、NHK党の黒川敦彦幹事長が、「統一教会は反日カルトで、1958年に日本での布教の先鞭をつけたのが安倍の祖父岸信介だった」と発言(ワシントン・ポストはこれを7月12日付電子版で報道)。

それだけではない。黒川幹事長は「安倍元首相が統一教会の集会に参加していて、ネット上で大炎上していました。高市早苗氏もそれらに関与していました」と、まるでその後の大混乱を予言するかのような発言すらしている。

暗殺事件の直前の言論空間で、保守政党の大物と「反日カルト」とのただならぬ関係を“予定調和の聖地”であるNHKの生番組で暴露する前代未聞の展開に、リアルタイムで番組を観ていた私も椅子からずり落ちるほど驚いたものだった。

にもかかわらず、この黒川発言を取り上げる日本メディアは当のNHK自身を含め、ほとんど皆無だった。この黒川幹事長の「逸脱行為」を制御できなかったことで、NHK内では上層部から「旧統一教会と特定の政治家の関係について、突っ込んだ憶測を安易にオンエアしてはならない」というお達しが出たとされる。

黒川幹事長の番組での討論マナーは、振り付けを交えて風刺唄を披露するなど、いささか脱線気味だったものの、その指摘はとても貴重なものだった。この一件がその後、NHKがカルト宗教と政治との関係について突っ込んだ報道ができない遠因を作ってしまったとしたら、まことに残念なことだ。