「似ているだけ」を評価する世代

さて話を現代に戻そう。

1980年代後半から90年代前半にかけての「ものまね四天王」ブームと比べて、今のモノマネ芸については「細分化」と「日常化」のキーワードがポイントになる。

まず「細分化」の観点。

前述のように「ものまね四天王」時代、モノマネ芸の評価基準は総合力だった。似ているだけでなく、誰も思いつかないような着眼点や、笑いがそこに求められた。

当時の『爆笑!スターものまね』や『ものまね王座』は、そういうケレン味の部分で戦う構図であったがゆえに、笑いなしで真剣に歌う岩本恭生の布施明の超絶そっくりモノマネと、ピンクの電話が亀のモノマネで歌う「カルメン’77」が同じ土俵で戦うような異種格闘技戦であった。

現在、テレビではモノマネを競う複数の番組があるが、とにかく似ていることだけを基準にした大会もあれば、笑いを競う大会もある。さらにはある意味「着眼点」だけを抽出した『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジテレビ)もあり、それぞれのスペシャリストがそれぞれのフィールドで競い合うようになっている。

結果、「似ていること」だけを基準とした歌まね大会では、笑いも何もなくCHAGE and ASKAの完コピをした人が優勝したりしているのだが、それはそれで良いとなっているのが現代である。

昔は「似ているだけではダメ」がまず大前提としてあったのに、今、特に若者世代では「似ているだけの人」も高く評価されているのが面白い。

あらゆる番組で「モノマネ」を見る時代

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もう一つが「日常化」の観点。

かつてモノマネは『ものまね王座』など特番スペシャルで不定期に何ヶ月かに一回見るものであった(だからこそ『ものまね珍坊』のような毎週放送のレギュラー番組は極めて例外的だった)。

しかし、今テレビでモノマネ芸を見ない日はない。
いや、モノマネ番組自体はさして増えているわけではない。

だが、お笑いネタ番組でもモノマネ芸を主体とした芸人が必ず出てくるし、カラオケ番組、クイズ番組、情報バラエティ番組など、複数芸能人が出るような番組には必ずモノマネ芸の人がいて、MCからのフリにモノマネで答えることが一つの定番スパイスになっている。

とにかくありとあらゆる番組でモノマネが披露されることが求められるようになっている結果、日常喋りの和田アキ子でブレイクした時期のMr.シャチホコや、現在大人気の松本人志モノマネのJPなどは、ものすごい本数の番組に出演している。

お笑い芸人でもモノマネが得意な者は、そこをブレイクの突破口とするケースも増えた。少し前であれば博多華丸・大吉の博多華丸も『パネルクイズ アタック25』(テレビ朝日)の児玉清モノマネがきっかけであったし、近年でも、野沢雅子そっくりの声のアイデンティティ・田島、上沼恵美子のモノマネで特に関西方面で引っ張りだこだった天才ピアニスト・ますみなど枚挙にいとまがない。