解体により「新しいメタボリズム」を実現

「中銀カプセルマンシオンパンフレット」によれば、この都心に置いた小さなカプセルを黒川は、多重構造化する生活の中で確保するべき「自分らしい個人の空間」と位置付け、「新しい住まい方を提供する」と述べた。

複雑化する暮らしの中で、最低限の自分の空間だけを確保しようという考え方は、シェアハウスやキャンピングカーの流行などとも共通し、むしろ非常に今っぽいのだ。

「黒川さんは早すぎたんだと思いますよね。黒川事務所とは新たなカプセルのモジュールをつくる話をしていたりもするんですが、次のメタボリズム建築をつくる建築家が現れたりしたら最高ですね」

プロジェクト発足当初は、「老朽化マンション」の代名詞としてのネガティブな取材が多かった。それが発足後の8年で、メタボリズムを体現したかのような変化が起きている。
欠点の多い建物ではあったが、それだけに住民たちがつながり、そして世界へ拡散されていく。

「1、2年遊べるよ、と言われて購入したものが12年続いてしまいました。ある意味、人生を狂わされてしまいましたね(笑)。でも、これからも時代と共に変わっていく新陳代謝を実現していけるんじゃないかと楽しみにしています」

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解体現場を背景に
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取材・文・撮影/宿無の翁
写真提供/中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト『中銀カプセルタワービル 最後の記録』(草思社)