半世紀の歴史を持つメタボリズム建築

2022年4月に解体が始まった「中銀カプセルタワービル」。銀座にあるこのビルは、建築家・黒川紀章の設計によるメタボリズム建築として名高い。1972年竣工。ちょうど50年での解体となった。

メタボリズム=新陳代謝。この建物は1部屋ごとにコンテナのように独立している“カプセル”の集合体で、それを入れ替えながら半永久的に使おうというコンセプトだった。

15部屋を購入し保存を訴えるも解体。「中銀カプセルタワービル」の虜になった男性が語る魅力_1
解体前の中銀カプセルタワービル。インパクト大の外観
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室内は家具家電がビルトインのミニマルな空間。写真は床をリノベーションした部屋

しかし実際には、カプセルの入れ替えは実施されず通常のマンション同様に老朽化。構造特有のデメリットも多く、2021年まで維持されてきたこと自体、住人の保存活動によるところが大きかったらしい。

2014年に発足した住民らによる「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」では、カプセルの売買や賃貸を斡旋する「カプセルバンク」やカプセルの見学ツアーを実施し、書籍を出版したり取材窓口となって保存活動を行ってきた。

さらに2017年からは、管理組合との調整を経て、カプセルを体験してもらうための短期賃貸「マンスリーカプセル」を実施。

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短期賃貸では、無印良品がコーディネートした「無印カプセル」も貸し出された

解体決定にあたっては、2021年夏にカプセル保存のためのクラウドファンディングを行い、これが話題となって国内外からビル解体後のカプセル利用の問合せが相次いだ。

こうした活動に至るまでにプロジェクト代表の前田達之さんは、15カプセルのオーナーとなってビルの管理組合での議決権を強めたのだという。

なぜそこまで、この建物に入れ込むのか。解体の様子を近隣のマンションの部屋を借りながらレポートしている前田さんを訪ね、話を聞いた。

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2022年6月半ば、「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」で借りている近隣マンションの部屋から工事の様子を望む