初めてのトリプルアクセル着氷
そして大会後に行われた全日本ジュニア選手権、河辺は公式戦で初めてトリプルアクセルを着氷した。それは彼女を羽ばたかせるきっかけになった。
過去、荒川静香、安藤美姫、浅田真央、宮原知子、樋口新葉、坂本花織、紀平梨花などが制覇した”登竜門”で優勝したのだ。
2020-21シーズン、河辺はシニアに転向するもコロナ禍に見舞われ、多くの大会が中止になった。思わぬ足踏みだったはずだが、全日本選手権では201.58点と大台に乗せ、6位に入賞した。FSだけで言えば5位だった。
ここではSPもFSもトリプルアクセルに挑戦している。ステップアウト、転倒で、どちらも失敗だった。しかし、彼女は失敗を糧にするように挑んでいるように見えた。
「今シーズンは表現力を課題にやってきて、そこは少しよくなってきたと思います。(ローリー・ニコル氏の振り付けで)去年よりも上半身を使って、動きながら滑ることができるようになってきました。ただ(シニアの)上位選手と比べると差があるので、来シーズン(2021-22シーズン)は近づけるように頑張りたいです」
そう語った河辺は、虎視眈々とその先を見据えていた。
「脚の状態もありますが、4回転はできるように練習を増やしたいな、と。トーループを練習していたんですが、サルコウをやるようになって、両足では立てるようになってきて。まだ一度、回転が足りずに降りただけですが…」
開拓精神というのか、若い選手ならではの意気軒昂さとも言えるが、その貪欲さは技術向上を後押ししていた。難易度の高いジャンプに挑むことによって、ジャンプ以外のスピンやステップも改善。表現力も追いついてきた。
しかし当時、北京五輪日本代表争いではあくまでダークホースだった。北京五輪に向け、日本代表3人に有力なのは紀平、坂本の二人で、もう一人は樋口、三原舞依、松生理乃の誰か。それが大方の予想だった。
河辺の挑戦は天恵を得ていたのか――。