闘争心むき出しの選手とどう向き合うべきか
しかし、イニエスタは一線を越えていない。
交代する大迫勇也とは両手をタッチし、整然とピッチに送り出している。監督とひと悶着があったわけでもない。ベンチの前を通りながらチームメイトやスタッフとあいさつする中、やや不満げな顔を見せ、ぶつぶつと口を動かしたが、一連の儀式をやり切った。その最後に何かを蹴っただけで…。
スペインでは、この程度の悪感情が出ることはしばしばで、モラルをとやかく言う輩はいない。
監督を含めた周りは、戦いで熱くなった選手とどう付き合うべきか、心得る必要がある。ピッチに立つ選手は闘争心むき出しで戦っているだけに、普通の状態ではない。交代に対して選手が明らかに不満を抱えている場合、交代時に握手など求めないことだろう。一時的に熱くなった選手に「服従」を求めるような握手や不要の声掛けは、とても危険である。
なぜなら選手自身、手を伸ばし、首肯することが「自尊心の降伏」に思えるからだ。
そこで手を振り払った場合、自らを追い込むことになる。しかし、理性で自制できない。本能的にそれを振り払ってしまうことがあるのだ。
例えば今年4月、セレッソ大阪の乾貴士が交代時に監督の手を振り払い、ベンチに戻っても悪態をつき、退団にまでこじれてしまった。行動の責任はすべて乾自身にあるとはいえ、同情の余地もある。納得できない交代で、公然と服従を求められるのは、大恥をかかされた気分になる。
そこで揉めたことが大きく煽られて、退くに退けなくなったのではないか。