謙虚で温和な世界史上最高のサッカー選手

2022年7月9日、J1リーグ第21節ジュビロ磐田対ヴィッセル神戸(ヤマハスタジアム)の一戦で、”小さな事件”が起こった。

神戸のスペイン人スター、アンドレス・イニエスタが後半途中で交代を命じられた。ピッチを去り際、不満そうな顔を見せている。そしてベンチ前で足を振り上げ、何かを蹴る仕草をしていた。

試合後、その不服従と規律を欠いた行為が批判の的になった。質問を受けた神戸の吉田孝行監督は「絶対にあってはいけない」と強調した。クラブ内外へのアピールのためか、「子供たちに見せられない」とまで言った。

しかし、ことさら責めるような行動だったのか?

イニエスタは世界的サッカー選手である。FCバルセロナの中心選手として長く活躍し、あらゆるタイトルを獲得。スペイン代表としても二度の欧州選手権優勝、一度のワールドカップ優勝を経験している。

そのプレーは38歳になった今も、言語を絶する。仙人を思わせる細身の身体だが、相手の力を利用し、簡単に入れ替わる。そして卓越したビジョンと輝かしい技術で、魔法のようなプレーを展開。肉体的利点を使わず、破格のボールゲームをする点で、「世界史上最高のサッカー選手」と言えるだろう。

だからと言って、至って驕りはなく、謙虚で温和な人物だ。

故郷のクラブであるアルバセテが財政的にクラブ消失の危機にあった時には、真っ先に手を差し伸べた。ユース時代の親友、ダニ・ハルケを心筋梗塞で亡くした後、南アフリカW杯で決勝ゴールを決め、Tシャツにメッセージで追悼した話は語り草である。

神戸でも誰にでも分け隔てなく接し、親日的な姿勢を崩さず、サッカーに対する姿勢は誰よりも模範的だ。