防衛能力そのものが、世界水準から大きく遅れている
AIは本物の産業革命である。しかし、本物であるからこそ、偽物も大量に生まれる。
鉄道ブームでも、インターネットバブルでも、再生可能エネルギーでも、必ず同じことが起きた。テーマが本物であることと、すべての関連銘柄が本物であることは、まったく別の話なのである。
サイバーセキュリティも同じだ。日本企業はランサムウェア攻撃に晒され、業務停止、情報流出、信用失墜に苦しんでいる。しかも、実際の現場は、政府や市場がイメージするほど“強固”ではない。
私はセキュリティ分野の当事者から直接話を聞いたが、現場では「約8割の企業が最終的に身代金支払いに応じている」と言われている。もちろん表には出ない。公表できない企業も多い。
しかし現実には、復旧停止期間、信用低下、顧客離れ、業務麻痺を考えれば、「払ったほうが損失が小さい」という判断に追い込まれるケースが少なくないという。
つまり、いま日本企業で起きていることは、“防衛”というより、“やられた後の損失処理”なのである。しかも深刻なのは、そのための予算を、事実上あらかじめ織り込む企業まで出始めていることだ。
これは、もはやAIやセキュリティを成長産業として語る以前に、日本企業の防衛能力そのものが、世界水準から大きく遅れていることを示している。
円安をも味方につけたバフェット
バフェットは、そういう“言葉で膨らむ物語”には簡単に乗らない。彼が買うのは、現金を生む事業であり、実物資産であり、長期にわたって社会から必要とされ続ける仕組みである。
商社は資源と物流の要であり、東京海上はリスクを引き受ける装置である。どちらも、地味で、古く見えて、実はこれからの時代に極めて強い。
しかも、彼は円安も味方につけた。日本全体から見れば、過度な円安は購買力を奪い、輸入価格を押し上げ、物価高倒産を増やす。しかし、外貨収益を持つ商社にとっては、円安が利益を押し上げる面もある。
さらにバークシャーは円建て債を活用し、低コストの円資金で日本株に投資するという、実に巧みな構造を作った。日本人が円安で苦しむ一方で、バフェットは円安を利用して、日本の外貨獲得企業を買っていたのである。これは皮肉だが、投資としては見事と言うほかない。












