いまの市場はAIに酔っている
私は、バフェットが戦争を予言していたと言いたいわけではない。
しかし、彼は少なくとも、平和と低インフレとグローバル化が永遠に続くとは考えていなかったのではないか。世界はもっと荒れる。資源はもっと重要になる。物流はもっと詰まる。保険はもっと高くなる。リスクを引き受けられる資本の価値は上がる。
そう考えれば、総合商社と東京海上への投資は、きわめて整合的である。
いまの市場はAIに酔っている。だがバフェットは、AIの夢ではなく、AIを支える電力、資源、保険、物流、現物の世界を見ていた。多くの投資家が空を見上げている時に、彼は地面を見ていたのだ。そして、その地面こそ、いま静かに揺れ始めている。
日本では既に、物価高倒産の連鎖が静かに始まりつつある。しかし、多くの人はまだ、その深刻さを実感していない。なぜなら、倒産には必ずタイムラグがあるからだ。
企業は原材料価格が上がった瞬間には倒れない。まず内部留保を削る。借入を増やす。値上げを我慢する。支払いサイトを延ばす。つまり、“体力で時間を買う”。だから、いま表面化している倒産件数は、数カ月前の原材料高、燃料高、物流費高騰の結果に過ぎない。
秋口にかけて、倒産の連鎖が一段と現実味
しかも現在は、そこへ中東情勢による原油高、ナフサ高、海運保険料上昇、円安、人件費高騰まで重なってきた。つまり、本当の物価高倒産ラッシュは、まだ完全には始まっていない可能性がある。
私はむしろ、猛暑による電力コスト上昇、物流逼迫、資材高騰が本格化する夏以降から秋口にかけて、倒産の連鎖が一段と現実味を帯びてくると見ている。
そして、その時に初めて多くの人は気づくのではないか。株価だけが上がっていた一方で、日本の実物経済の体力そのものは、静かに削られ続けていたことに。
株式市場では「日本復活」が叫ばれるが、実物経済では供給能力が摩耗している。この乖離こそが、いま最も危険なのである。
バフェットの投資を見ていると、彼が買ったのは日本株ではなく、日本の“供給網”であり、日本の“リスク引き受け能力”だったように思える。
総合商社は、世界からモノを持ってくる力である。東京海上は、世界のリスクを引き受ける力である。どちらも、平時には地味だが、有事には国家の背骨になる。そして、ここにこそ、いまの日経平均を見るうえでの重要なヒントがある。












