なぜドアにチェーンがつけられていたのか
そして、問題の“開かない部屋”にたどり着く。
引き戸を開けようとしても、開かない。
「開かない……ということは、何か内側で起きている。もしくは人がいるな!と思いました」
室内側から入ることができなかったため、ふかぽんさんは外に通じる窓から部屋の中へ入った。
部屋の中にはベッドマットが置かれていた。窓は開いているが、外からはわからないように雨戸が閉められていたという。さらに、部屋の内側には引き戸を固定するようにチェーンが取り付けられていた。
つまり、室内側からではなく、外の窓から何者かが出入りしていたと考えられる。
ほかの部屋にも、同じように鍵のようなものが取り付けられていた。また、床はかなり傷んでいたという。
「もともと床がべこべこの家を貸したので、余計にべこべこになったなと思いました。あと冷蔵庫の中のものなども腐っていましたね」
夜逃げされた部屋に、誰かが住み着いていたのだろうか……。
今回、特に注目を集めた“引き戸にドアチェーン”の改造だが、ふかぽんさんは、大家としての経験から、その理由をこう推測する。
「一部の外国人の方に大きい家を貸すと、勝手にシェアハウスのような状態にしていることも多く、そうなると個人のスペースを守るために、自室のドアに鍵をつけることもあります。
おそらくですが、日本に入国してすぐに家を貸してくれるところは少ないはずですし、審査も通らないので、一旦友人宅に滞在し、仕事を見つけ、家を探し、自立していく。今回もそうした過程の中で、ドアにチェーンをつけたのかもしれません」
ふかぽんさんにとって、入居者による無断改造や夜逃げは、今回が初めてではない。
「部屋の無断改造トラブルなどはよくあります。外壁をピンクに塗っていたり、漆喰を塗って途中で諦めたり、棚を作り途中で諦めたり、お風呂を解体して途中で諦めたりと様々です」
築古物件の大家にとっては、こうした“予想外の原状回復”が現実に起こることがある。
なぜ、引き戸にドアチェーンがつけられていたのか。その本当の答えは、もうわからない。
だが、残された部屋は、大家にとってはミステリーでは終わらない。腐った食品が詰められた冷蔵庫、傷んだ床、勝手に取り付けられた鍵。そして、原状回復という現実が待っている。
怪談よりも怖いのは、リアルなお金の問題なのかもしれない。
取材・文/ライター神山


















