「金太郎、いい人です。」(集英社文庫・コミック版9巻収録)
金太郎が出張デート不倫?
かなわない恋ほど、苦しいものはない。会いたい、近づきたい、気持ちを伝えたい。だが、相手にはすでに家庭があり、その思いを押し通せば相手を困らせてしまう。そんな恋にどう向き合えばいいのか。
『サラリーマン金太郎』第87話では、そんな苦しさに対して一つの答えを提示している。
新婚の金太郎は、自分に思いを寄せる若い女性・千秋と二人で盛岡を訪れる。千秋は出張の金太郎を追って新幹線に乗り、盛岡までやって来てしまったのだ。
金太郎も、そんな千秋を無理に追い返さない。千秋は父親の墓参りに付き合ってほしいと頼み、山を登り、温泉に入り、ついには同じ部屋で夜を過ごす。
寝ている金太郎の顔を見ながら、千秋は祖母の言葉を思い出す。
「お前があの人を必要としている事は分かるよ……。でもね、その人はお前を必要としているのかい…… お前が想うほど……お前を必要としていなかったら……その人にとっては迷惑なだけなんだよ……。お前が一方的に必要としているだけで、その人を困らせちゃいけないよ……。千秋。それをちゃんと分かることも、人を好きになることなんだよ」
好きになった気持ちそのものを責めるのではない。けれど、その気持ちをそのまま相手にぶつければいいわけでもない。相手の立場や事情まで考え、困らせないように引くこともまた恋なのだというのだ。
千秋はその言葉を思い出し、金太郎に近づきたい気持ちをこらえる。そして金太郎もまた、千秋に特別な感情を抱いているようだが、手を出さない。
好きだからこそ踏み込めない。その切ない距離感を、ぜひ漫画で読んでほしい。























