特定国の出場を政府関係者が働きかける事例は極めて異例
もっとも、この案が実現する可能性は極めて低い。最大の理由は、ワールドカップの出場枠が厳格な予選制度に基づいて決まっている点だ。仮にイランが出場できなくなった場合でも、通常は同じアジア枠内での繰り上げや再選考が検討されるのが筋であり、欧州の敗退国を“政治判断で追加する”ことは大会の公平性を大きく損なう。
また、FIFA会長は現時点でイランの出場に強い自信を示しており、代替案そのものが想定外である可能性も高い。
さらに、スポーツと政治の距離という観点も重要だ。オリンピックやサッカーでは歴史的に政治的介入が問題視されてきたが、今回のように特定国の出場を政府関係者が働きかける事例は極めて異例であり、FIFAの統治原則とも相容れない。
集英社オンラインは米ホワイトハウスに「イランの代替でのイタリアの出場の提案」に関する質問状を送ったが、期日までに回答がなかった。
総じて今回の騒動は、「もしも」のシナリオに政治的思惑が重なった結果と言える。イラン情勢という現実的な不確実性がある一方で、イタリア案はあくまで非公式かつ象徴的な提案にとどまる可能性が高い。
平和の祭典とされるサッカーの世界的イベントであっても、国際政治の影響を完全に切り離すことは難しい。その現実を示した一件だが、少なくとも大会の枠組みそのものが大きく変わる可能性は低いと見るのが妥当だろう。
取材・文/集英社オンライン編集部












