ボランチ不在をボランチで埋めない森保采配

北中米W杯開幕直後、日本代表に大きなアクシデントが起きた。主将の遠藤航が負傷のためチームを離脱し、代わって追加招集されたのは、同じボランチの選手ではなく、前線を主戦場とする町野修斗だった。

一見すると、これはわかりにくい人選である。遠藤は森保ジャパンの中盤の基準点であり、守備のスイッチを入れ、セカンドボールを拾い、試合の重心を整える存在だった。その穴を埋めるなら、経験、技術、欧州での実績を考えても守田の名前が最初に浮かぶ。

にもかかわらず、森保一監督は中盤の枚数を同型で補うのではなく、町野という攻撃のカードを加えた。

この選択が示しているのは、遠藤の代役を「遠藤と同じ仕事をする選手」として探したわけではない、ということだろう。大会中の選手変更は、単なるポジション補充ではなく、26人全体の再設計である。遠藤不在によって中盤の安定感は確実に落ちる。

だからこそ、森保監督は残った中盤陣で守備の構造を保ちつつ、別の局面で勝ち筋を増やす道を選んだのではないか。

2022年カタールW杯の決勝トーナメント1回戦で敗退した直後の遠藤。リベンジの機会は訪れなかった…(写真/JMPA)
2022年カタールW杯の決勝トーナメント1回戦で敗退した直後の遠藤。リベンジの機会は訪れなかった…(写真/JMPA)
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町野の追加招集には、前線の高さ、収まり、ゴール前での一発という意味がある。強豪相手の試合では、長い時間ボールを握れない展開も想定される。押し込まれた後に、クリアボールを前線で時間に変えられる選手、セットプレーやクロスで相手に違う警戒を強いられる選手は、短期決戦では大きな価値を持つ。

遠藤を失ったことで守備の強度が下がるなら、守備的MFを1人足すよりも、出口を増やすことでチーム全体の負荷を下げる。そういう発想も成り立つ。

では、なぜ同ポジションの実力者である守田英正ではなかったのか。能力の問題だけでは説明できない。守田は欧州の高い強度の中でプレーし、ボールを受ける技術、相手を外す判断、前進させる力を持つ。むしろ個の能力で見れば、今回の追加招集候補として十分すぎる存在だ。

ただ、選考とは「うまい選手を上から順に選ぶ作業」ではない。大会中の代表チームに必要なのは、限られた準備期間で、すでに作られた約束事にどれだけ速く入れるかである。

とくに遠藤離脱後の中盤は、リスクを取って前に出るより、まずバランスを崩さないことが優先される。守田のように自分の考えを持ち、試合を動かせる選手は強力な武器である一方、チームの方向性と完全に重ならなければ、短期決戦では扱いが難しくなる。