支援の手を差し伸べるべき層の首を絞めるような制度

さらに悪質なのは、明らかな公約違反を犯している点です。2023年に岸田内閣の「こども未来戦略会議」が方針を打ち出した際、政府は「国民に実質的な負担はかけない」「他の社会保障費を歳出改革で削って財源を捻出する」と明言していました。

それがいつの間にか、医療保険料に上乗せして徴収するという話にすり替わっています。国民から広く薄くお金を取るのなら、ごまかさずに堂々と「増税します」と言うべきです。

しかも、この保険料の上乗せ徴収には「上限」が設けられています。つまり、一定以上の高所得者は負担が頭打ちになる一方で、中間層や低所得者層には相対的に重い負担がのしかかるという「逆進性」を孕んでいるのです。

本来支援の手を差し伸べるべき層の首を絞めるような制度設計になっており、本気で制度の影響を理解しているのかすら疑わしくなります。

国民に対する説明責任を完全に放棄

ネット上では、この制度に対して「子どもがいない独身者からも取るのか」「独身税だ」という批判が起きています。

個人的には、ある政策の恩恵を直接受けない人が費用を負担すること自体は、税や社会保険の性質上(例えばAI産業への支援に税金が使われるように)ある程度仕方のないことであり、その批判は「イチャモン」に近いと感じます。

しかし、この制度の真の罪深さは、「なぜこの負担が必要なのか」「国民から集めた資金で、具体的にどれだけ子どもが増えるという科学的・経済学的な根拠があるのか」を全く説明できていないことにあります。国民に対する説明責任を完全に放棄しているのです。

物価高、エネルギー危機、財政難、そして少子化。直面する危機に対して、政府が「生活は苦しくなりません」「国民に負担はかけません」という耳あたりの良いメッセージを流し続ける時代はもう終わりました。国民に痛みを伴う現実を直視させ、共に我慢し、乗り越えるための合理的な道筋を示す。そうした真のリーダーシップが日本政治に取り戻されない限り、この国の衰退を食い止めることはできないでしょう。

構成/集英社オンライン編集部