イワシ豊漁を一時の幸運で終わらせないために

今後の課題も多い。

まず、イワシ資源は増え続ける保証がない。最新評価でも、太平洋系群は高水準を保ちながら、近年の加入量には減少傾向が見られるとされる。かつて1980年代に高水準だった資源が1990年代以降に急減した歴史を思えば、今の豊漁を前提にした過度な設備投資や依存は危うい。さらに、「国際的な漁獲圧の上昇」も懸念されると前出の仲卸業者の男性はいう。

「近年は外国船の漁獲増加も指摘されています。2024年にはロシア59.3万トン、中国26.1万トンと、日本以外の漁獲も大きい。国内だけでなく、北太平洋全体での資源管理が重要です。

さらに、生態系への影響もあります。イワシの増減は、餌生物や競合種との関係を通じて他魚種にも影響しうる。水産庁も、サンマ不振の説明の中でマイワシなど競合種の増加に触れており、ある魚の豊漁が別の魚の不漁と無関係とは言い切れないので」

2026年春のイワシ豊漁は、日本の漁業にとって久しぶりの明るい材料である。しかしそれは、「海が元に戻った」という単純な話ではない。むしろ海洋環境の変化で魚種構成が大きく揺れ、その中で今はイワシが前面に出ていると見るべきだろう。

大切なのは、豊漁を一時的な幸運として消費するのではなく、資源評価に基づく管理、加工・流通体制の強化、そして他魚種が減る時代に対応した産地の再設計につなげることだ。イワシが大量に獲れている今こそ、日本の水産業が「獲れた魚をどう持続的に使うか」を問われている。

イワシのサンドイッチ (写真/shutterstock)
イワシのサンドイッチ (写真/shutterstock)
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 取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班