住宅地に人が押し寄せ住民の不満が爆発
そもそも中目黒は、都内の桜名所の上野恩賜公園や新宿御苑、千鳥ヶ淵などの花見客を想定して整備された公園・庭園とは異なり、住宅地・生活道路の中に桜があるという特徴がある。
そのため完全な入場制限をすることは不可能だ。さらに一般的な住宅地ではなく、花見客を歓迎する店舗や商業施設も混在する近隣商業地域でもある。
花見客に対してデメリットしかない住民の不満が顕在化したのが2014年11月に開催された『Nakameguro青の洞窟』である。中目黒駅付近から目黒川沿い、宝来橋~朝日橋までの全長500メートル、往復1kmの木々が約40万球の電球で青く光り輝き、映り込む水面と一体となった幻想的な世界が広がった。メディアでも度々紹介され、中目黒に人が大挙して訪れるようになったのだ。
「『Nakameguro青の洞窟』は冬季の集客に役立つということで目黒区が広告代理店の提案を受け入れて開催されました。メディアでも大きな話題になり想定以上の人が訪れたのです」(柏井氏)
しかし、桜の開花はおおよそ2週間程度だが、青の洞窟は1か月と開催期間が長かった。ここでそれまで蓄積していた住民の花見客に対する不満と相まってイベントに対する反感が爆発。説明会を開催するも、住民の賛同が得られず中目黒での青の洞窟は1回限りのイベントとなったのである。
「花見客の数が300万人と言われたコロナ禍前はひどかった。観光バスで外国人観光客が大挙して訪れ、買い物にも行けない、電車にも乗れないなど、日常生活に大きな支障が出ました」と語る住民の小高氏の住むマンションの前が観光バスの降車場となり、マンション前にゴミがあふれ、植樹や駐輪していた自転車にいたずらもされた。
観光バスは時間制限駐車区間のパーキング上に無断で駐車。乗用車はもちろん、工事車両も停めることができなくなった。マンション管理組合の理事長でもある小高氏はバス会社やツアー運営会社、目黒警察にクレームを入れるも、パトカーが注意したときだけ観光バスが移動するといういたちごっこだった。
2022年10月の韓国・梨泰院雑踏事故の影響もあり、警察は警備を強化。地元としても人が集まる場所として厳重な対策が必要となった。
そこで中目黒の最大の課題である、狭い道への人の集中を避けるため、“立ち止まらせない導線設計”が徹底された。川沿いを歩行一方通行に誘導する順路看板を設置し、橋の上や狭い場所での停止は禁止。川の合流点遊び場にテントを常設し、目黒区職員、商店街・町会が常駐し、苦情や事故に即応した。
警備員を増員し、警察とともに導線管理を実施。ぼんぼりの電灯が消えた後も、約1時間、保健所、商店街、警察が合同でパトロールを行うなどして対策を強化した。













