修繕積立金の制度の破綻
さらに深刻なのは、不動産を共有することに起因する財務的な問題だ。
区分所有マンションは土地や皆で使用する部分を所有者が全員で共有するという前提があるので、皆で将来の大規模修繕工事に備えて修繕積立金を積み立てていくことになる。
しかし、すべての人が築年数が経過するに従い年々増加傾向にある管理費と修繕積立金を払いきれるわけではない。所有者が高齢化すれば、なおさらだ。
一部の所有者が修繕積立金を払えなくなると、その負担は最終的には他の所有者に転嫁される。
法的には相続人などに請求することはできるのだが、実際のところそこまで追いかけることは難しい。積立金の取りっぱぐれが積み重なると、修繕積立金の制度そのものが破綻しかねない。
しかも区分所有はあらゆる意思決定に多数決が必要であり、個人の裁量でできることは限られる。
自らのマンションが老朽化し、必要な修繕もできないままに資産価値が低下し、朽ち果てていくのを、指をくわえて見ていることしかできないという危険な状況に陥りやすい資産なのだ。
実際にこの物件にも、漏水トラブルが起こった。配管の老朽化が原因と見られるが、問題のある部分が専有部分なのか共有部分なのかを判断するには調査が必要であり、その調査自体に物理的な解体が必要とされた。
入居者がいる状態でそれを行うのは極めて困難であり、専有部分の問題であれば所有者の対応だが、共有部分であれば管理組合の決定が必要で、前述した通りその決定プロセスは硬直化しており柔軟には機能していない。
結局そのときは損害保険が下りたのだが、こうしたことが続き、払い出し保険金が年々増加していけば、保険会社が契約を更新しなくなる可能性も出てくる。
要するに、自分の意思だけでは何もできない区分所有のマンションは、投資対象としては適していない。
近年はタワーマンションが雨後の筍のように乱立しているが、子育て世代に人気のエリアなどでは特に属性や年代が均質になりがちで、いずれ年が経てば間違いなく高齢化が一気に押し寄せるだろう。
たとえば武蔵小杉では続々と誕生するタワマンに子育て世代が集中したことで小学校不足に陥ったが、こういうエリアや物件ではいずれ一斉に高齢化が進むことは間違いない。
かつて高度経済成長期の住宅政策における象徴的存在だった多摩ニュータウンが辿った道と、同じ道を辿っているといえるだろう。
文/小林大祐













