新会長の言葉、なぜここまで世論と乖離

発端となったのは、3月20日に公開された読売新聞オンラインのインタビューだ。

井上会長は、かねてより視聴者の間で待望論が根強い「スクランブル化(見たい人だけが契約し、受信料を支払う方式)」について、「有料配信やスクランブル方式などとは相いれない」と一蹴。現在の徴収制度を「最上」と自画自賛した。

この発言が報じられるやいなや、SNS上では「時代錯誤も甚だしい」「電波の押し売りを正当化するのか」といった批判が殺到。文字通りの“炎上”状態となっている。


NHKの井上会長(写真/共同通信社)

NHKの井上会長(写真/共同通信社)

公共放送の使命を説くはずの新会長の言葉が、なぜここまで世論と乖離してしまったのか。

井上会長がインタビューで繰り返したのは、公共放送としての「高潔な使命感」だ。

「スクランブルを導入すれば、視聴率がとれる番組の制作に偏り、内容が画一化していく」「災害や選挙報道など、多額のコストがかかる公共サービスを全員で公平に分担すべきだ」

これらは一見すると筋が通っているように聞こえるが、この論理には決定的な欠落がある。

巨大な組織維持のための「最上の制度」でしかない

現代はNetflixやYouTubeといった多種多様な選択肢が溢れる時代だ。自分が見たいコンテンツに、納得した対価を払うのが「当たり前」の感覚となっている。

3月18日の定例記者会見で井上会長は、昨今のスポーツ中継のあり方について、「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)がNetflixで独占配信されるなど、放送権料の高騰で国民の視聴機会が限られるのは、あまり望ましくない」と発言し、他社の有料配信サービスが「国民の視聴機会を奪っている」との懸念を示している。

だが、WBCこそ、見たい人がそのコンテンツに対して支払う「スクランブル化」が望ましいのではないか、と、その主張に矛盾を感じるのは、筆者だけではないはずだ。 

〈炎上〉NHK新会長「スクランブル化は最上でない」に批判殺到…“受信料強化”の裏にある組織防衛の本音_2

このような会長の発言は、視聴者からすると「公共性」を隠れ蓑にした、NHKという巨大な組織維持のための独善にしか映らない。